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民医連新聞

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医学生への働きかけ、なぜ大事?? 大運動をふまえて 山本一視医師部長にきく 民医連のためだけでない 日本の未来もつくる

 実習に来た医学生たちの姿を職場で見かける季節です。今号の特集は、民医連が医学生に働きかけることの意味を考えてみます。全日本民医連では昨年から「奨学生を増やし育てる大運動」を提起し、目標を超えて達成しています。この大運動の経験と医学生対策の意義を、全日本民医連医師部長の山本一視(かずみ)副会長(福岡・千鳥橋病院)に聞きました。(田口大喜記者)

医学生対策の意味

 どうして民医連は、医学生への働きかけを重視しているのか―。まず、当たり前ですが、医師がいないと事業所は成り立たず、地域から民医連が消えてしまうことになるからです。「医学生に選ばれない組織に未来はない」と言っても言い過ぎではありません。
 また、「医学生に民医連を届ける」ということは、日本の医療の在り方で大切な姿勢、「いつでもどこでも、だれでも親切でよい医療を」、「常に国民の目線から離れない」ということを広範な医学生に伝える作業です。日本の未来をつくる民医連綱領の実践そのものです。
 もちろん、後継者の誕生は、今の厳しい医療現場で命を守るためにふんばっている民医連の医師・職員にとっても大きな喜びです。

「大運動」をふりかえって

 さて、全日本民医連は昨年一〇月に「奨学生を増やし育てる大運動」を提起しました。以前もこうした大運動は行ったことがありましたが、その中でも最大の「一〇〇人の奨学生決意者を生み出そう」と掲げ、この春、その目標を超えて達成しました。民医連の全職員、とりわけ、大奮闘した医学生担当者の仲間と確信にしたい成果です。
 そもそも、この大運動は「二〇〇人新卒受け入れ、五〇〇人の奨学生集団」をつくれる組織に「進化」することを目標にしています。「数」だけでなく「質」を変える提起でもあったのです。大運動を通じて、県連や地協を越えた「オール民医連」でとりくむことが普通のこととして定着してきました。これは大きな進化の一つです。この姿勢を継続してきたいと思います。
 また、幹部が先頭に立って相談にのり、組織の総力を大運動に注ぎ込むとりくみが成功したところでは、大きな前進が見られました。
 高校生実習や模擬面接、実習やセミナーなども実を結んでいます。活動交流集会や医学対ゼミナールなどといったこの間の医学生委員会の活動の中で、各地の経験やアイデアを交流しながら、実践にうつす努力がありました。
 もちろん、まだまだ苦労もあります。しかし、新専門医制度との関連でも、医学生への働きかけが「日本の未来を左右する根幹に関わる活動」ということを、幹部を先頭に認識し、二〇〇~五〇〇人の医学生獲得ができる組織へと、さらなる飛躍をめざします。

こんな医者になりたい!

 一〇〇人の決意者は、どのように生まれたか。「民医連の奨学生になる」と決意してくれるに至った経緯は様々で、多彩なエピソードが生まれました。
 たとえば、祖母が民医連の病院に入院したことをきっかけに、民医連が医学生とともに活動していることを知った医学生は、定期的に医師と進路相談をするようになりました。実家も裕福といえる環境ではなく、「『無差別・平等の医療』を掲げる民医連に共感している」と決意。「卒業後は、民医連で恩返しができるよう働き続けたい」と語っています。
 また、医師体験を希望してきた医学生に、先輩奨学生が同席して奨学生説明の場を持ったところでも経験が。先輩が奨学生活動を通じて自分がどう成長したかを話すと、「つどいや奨学生の集まりに参加したい」と、その場で決意しました。
 保護者に民医連を語ったケースもあります。当初は民医連の奨学金を断わるつもりだった親が、民医連の理念や活動、一般的に民医連に持たれている偏見への疑問などを医師がていねいに説明していくと反応が変わりました。その結果、奨学生の申請に至りました。
 いずれも、医学生たちが私たちの構えを感じとり、「こんな医者になりたい!」と、未来の自分の姿を民医連に重ね合わせて考えた結果です。

全ての職員が関わる

 医学生への働きかけを全職員の活動にするためには、まず医学生担当者に、自分の思いや仕事を職場の仲間に語ってほしいと思います。それは担当者にとっても、自らの成長とパワーを得られる機会にもなります。
 医療活動に携わる現場の職員にしかできないこともあります。例えば、ある県連での看護管理者研修のワークショップでは、「どのように医学生に民医連を伝えていくか?」医療現場の目線から話し合われました。「自分はなぜ民医連で働くのか?」 民医連の医療活動を、そこでがんばる自身の思いをのせて医学生に見せる、あるいはまた自分たちがいつも見ている民医連の医師の姿を医学生に語ってください。
 医学生が民医連を選ぶために、自分たちができることを大いに実践してほしいです。


民医連の医療と研修を考える医学生のつどい“First Quarter”

 6月25~26日、全日本民医連は「第37回民医連の医療と研修を考える医学生のつどい“First Quarter”」を東京で開きました。
 民医連の奨学生や一般の医学生89人を含む168人が参加しました。昨年から、8月を本番にしたこれまでの開催スタイルを見直し、6月、10月、12月、3月と、年間を通じ学習や交流を重ねるものにしています。今回は2016年度1回目の企画。今年のメーンテーマは「いのちの平等」、今回の学習は「憲法」です。

《個人の尊厳守る憲法》

 東京・大田病院のSW、宮本麻子さんが特別報告。経済的困難な患者や家族の支援を通じて感じている社会の矛盾を語りました。民医連綱領と憲法25条(生存権)を示し、「全ての人が生きることを諦めなくていい社会を」と呼びかけました。
 伊藤塾塾長の伊藤真弁護士が「医療関係者が憲法を学ぶことの意味」と題して学習講演。「『戦争はよくないこと』の思いは譲れない」と始め、憲法の「立憲主義」「個人の尊重」「平和主義」を解説。「憲法とは、国家権力を制限して国民の権利・自由を守る法」と説明しました。
 さらに、自民党が作った改憲草案を「個人の尊重より、軍事・経済的に強い国づくりをめざし、『かけがえのない個人』を『代替可能な人』にしようとしている」と指摘。「今を生きる者としての責任を果たそう。憲法を知ってしまった者として今できることを」と、投票を呼びかけ。

《先輩が学生生活のヒント語る》

 2日目は、「医学生生活6年間で大事にしてほしいこと」をテーマに、千鳥橋病院の山本一視医師(全日本民医連副会長)と奈良・吉田病院の遠藤嶺医師(精神科後期研修医)の2人が語りました。
 山本医師は、「医学生生活の中で世界づくり、自分探し、仲間づくり」と題して講演。冒頭では、「憲法25条はどんなことを保障している条項か? 健康で文化的な最低限度の生活とは?」と問いかけ。また若者のホームレスや障害者の虐待例をあげ、憲法25条の大事さに触れました。自身が担当したホームレスの患者の事例をひきつつ、「なぜこの方はホームレスになったのか? 症状だけを診るのではなく、社会的な側面からも患者に視線を向けよう」と訴えました。
 遠藤医師は、医学部時代の学生自治会の経験から、主体的に生きることを学んだ、と紹介。「どんな医者になりたいか? は生き方と立場性が問われる。『よりよい医療』のためにはどうしたらいいかを考え、充実した学生生活を」とまとめました。

《医師の勉強だけでは知りえなかった》

 学習後はスモールグループディスカッション。「立憲主義の話に目からウロコ。医師になるための勉強だけでは知り得なかった」、「自分の考えを持ち、声をあげたい」などの声が。「多様な事例を聞けた。憲法と医療倫理はつながっている。今後に活かしたい」が全体のまとめでした。

(民医連新聞 第1624号 2016年7月18日)