「産前休暇ゼロ」「陣痛くるまで診療」 女性開業医師の実態を発表 保団連
全国の医師・歯科医師でつくる全国保険医団体連合会(保団連、会員数一〇万五〇〇〇)は、女性開業医会員に行った労働環境や家庭環境の調査の結果を七月六日に発表しました。医科・歯科あわせ開業後の出産で、「産前休暇ゼロ」との回答が二五%、また産後休暇は労基法が「就業させてはならない」とする六週間に満たなかったケースが八〇%以上。「陣痛が来るまで診療していた」「産後休暇をとれず体調を崩した」「いま妊娠初期だが代診の医師が見つからない」など、自由記載欄にも切実な声が書かれていました。
医科・歯科ともに国内の女性医師の割合は増加中ですが、医師労働は「労基法なし」といわれるほど長時間・過密です。そこに出産や育児を主に担わざるをえない女性医師、なかでも、「事業主」とされる開業医は労働者保護の法律の対象にならず、より過酷なことが浮き彫りに。こうした実態調査は公的機関にもありません。
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調査はアンケート方式で、約七四〇〇人の開業会員の三割を無作為抽出し、二〇一五年七~九月に実施。関心事や悩み、家族構成をきいた上で、産前・産後休暇とその間の診療体制(休診か代診か)、子育て支援の有無と内容、親の介護の必要が生じた際に仕事をどうした(する)か? 支援の有無、などの設問。六四四人が回答しました。
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「調査結果に、ここまで深刻だとは…と、私たち自身も驚いています」と、報告した同連合会の板井八重子女性部長。
保団連ではこれまで要望してきた公的保育所の増設や病児保育の充実に加え、「事業主の出産・育児休業補償制度」の創設を求めることにしています。
また、二〇一七年度から開始が予定されている新専門医制度への言及も。専門医取得に長期間を要する新制度は、出産年齢にも重なり、女性医師にとって非常に不利な制度、と指摘しています。
(民医連新聞 第1624号 2016年7月18日)