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民医連新聞

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07 男の介護 千代野さんとの奮闘記 [ 著・富田秀信 ] 人間捨てたもんじゃない

 退院後、「若い人に使えるサービスはない」と言われた妻。「何としても」というのは、格好つけている余裕もなく、藁(わら)にもすがる気持ちだ。
 お金で福祉を買う経済力はない。1人を交代で看られる大家族でもない。ならばどうするか…? 行き着いたところは、率直に「人の力」に頼るしかなかった。無理の言える親友、顔の分かる知人、そしてついには初対面の近所の方まで。
 ここで気付いたのは、夫婦共通の友人が多いとすぐ本題に入れるということだ。共通の趣味が多いと共通の友人も多く、「初めまして」とか、「妻の事ですが…」などという説明が不要で、手短かに依頼に入れる。
 「何曜日の何時から何時まで、自宅で妻を看てくれませんか?」「お宅の施設で預かってもらえませんか?」「何か起これば、全て責任はこちらが負います」という言葉を添えてのお願い。必死さが伝わったのか、次第に応援の輪が広がっていった。その人が無理せずできる範囲の輪を私が紡ぐ。ちょうどパッチワークのように。
 その間も福祉事務所、そして保健所へ出向いていた。保健所は、「精神障害は保健所の管轄」と人から聞いたから。それでも最初は何ら期待する回答はなかった。が、数回目の面談である保健師が、「あなたですか、よく新聞に奥さんの事を投稿しているのは?」。そして続けて「若年痴呆の事は、現在施策がなく我々も苦慮しています。すぐに解決できなくても問題意識は持っています」と。行政人にやっと理解者ができた! 目の前が明るくなった。
 問題意識を持つ人が多いほど、問題解決のスピードは速まるが、これまで全く理解者がいなかった行政窓口で、たった1人でも、寄り添ってくれる人が現れた事に、私は勇気100倍だった。


とみた・ひでのぶ…96年4月に倒れた妻・千代野さんの介護と仕事の両立を20年間続けている。神戸の国際ツーリストビューロー勤務。

(民医連新聞 第1623号 2016年7月4日)