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民医連新聞

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緊急連載 特養あずみの里裁判(4) 介護の未来かけ たたかう 木嶋日出夫弁護団長 介護の未来がかかった裁判での勝利のために

 長野・特別養護老人ホームあずみの里で二〇一三年一二月に起きたできごとが、刑事事件として訴追されています。木嶋日出夫弁護団長の寄稿。最終回は「無罪を勝ち取るために」です。

人間的な介護が困難に

 今回の警察の捜査と検察の起訴は、起訴された准看護師本人はもとより特養あずみの里の職員全体に、また介護施設で働く多くの皆さんに耐えがたい苦痛と不安を与えています。
 一生懸命入所者のために介護していても、異変や事故が起きたら、有無を言わさずに捜査され刑事訴追される。そんなことが日常的に行われるようになったら、介護職員は職場を離れ、介護内容での萎縮が始まるでしょう。
 どんなことがあっても「事故」を起こしてはならない。そのためには、非人間的といわれようと、転倒事故を避けるために身体を拘束する、誤嚥事故を避けるために流動食しか与えない、などという介護になっていくでしょう。高齢者の尊厳、生きがいや希望にそった介護は、影をひそめることになります。
 万が一にも本件で有罪判決が出るようなことになれば、警察と検察が大手を振って介護施設に介入し、介護現場の萎縮がすすみ、利用者の福祉は後退させられてしまいます。
 この刑事裁判には、わが国の介護の未来がかかっています。なんとしても、無罪・無実の判決を勝ち取らなければなりません。

弁護活動が検察追い込む

 弁護団は、警察・検察が押収した膨大な記録を返還させ、職員の皆さんの協力を得て異変が起きた当日の現場再現を行うなど、警察と検察のずさんな捜査と起訴の不当性を明らかにしてきました。
 多くの医師の協力を得て、女性の突然の意識喪失と心肺停止が、ドーナツの誤嚥や窒息によるものではなく、食事中の突然の脳疾患・心疾患と見るのが医学的に合理的であるとの鑑定書も作成し、証拠申請しています。
 また、福祉・介護の研究者の協力を得て、本件起訴がわが国の介護施策と介護現場に重大な悪影響をもたらすことを明らかにする意見書も書いていただき、証拠申請しています。
 検察官の起訴状・公訴事実と冒頭陳述の具体的内容に立ち入って釈明を求め、裁判官から六項目の釈明命令が出されるところまで検察官を追い込んできました。
 いよいよ本格的な証拠調べの段階に入りますが、今年四月の人事異動で、裁判官三人と主任検察官が全員入れ替えになるという新しい局面も生まれています。
 これまでの公判では間違いなく弁護側が一歩リードしてきたと思いますが、日本の刑事裁判には自白偏重など重大な問題があると言われていますから、それらを乗り越えるいっそう強力な弁護活動が求められています。

全国からの支援欠かせない

 裁判の勝利のためには、法廷内での准看護師と弁護団の活動だけでは不十分です。当事者と弁護団をささえる全国の皆さんの広範な支援がどうしても必要です。
 昨年「特養あずみの里業務上過失致死事件裁判で無罪を勝ち取る会」が発足しました。会の皆さんは、公判傍聴、無罪判決を求める世論を広める活動、当事者に対する精神的・財政的な支援活動を強めています。
 介護の未来がかかったこの裁判で無罪を勝ち取り、人間の尊厳をまもる介護の前進のために、全国の皆様の一層のご支援をお願いするものです。(連載おわり)

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(民医連新聞 第1623号 2016年7月4日)