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民医連新聞

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7月10日は参院選投票日 3500人の読者アンケートから 投票の意味考えてみた

 参議院選挙の投票日は一週間後。「国政選挙直前! 民医連新聞アンケート」に基づき、前号に続き、選挙と政治を考えます。今回は、「選挙に行く? 行かない?」「投票の意味って?」を三五五六人の声から―。

選挙、行く? 行かない?

 投票に行くか行かないか、の問いには、「行く」の回答が六七%、「行かない」は六%、「未定」が二六%。三分の一近くが、決めかねていることが分かりました。世代別に見ると、「未定」や「行かない」が若い人ほど多く、一八~二〇歳では「行く」が二〇%台(図1、2)。
 これまでの投票行動では、行っていない人は全体の一一・五%。その理由の一位は、「政治の事がよく分からない」(四六%)、次いで「自分が投票しても関係なさそう」(二〇%)、「正しい判断ができる自信が無い」(一五%)となりました。

図1

図2

無党派は「寝といた方がいい」?!

 三年前の参院選の投票率は五二%でした。政治への不信、不満から「棄権」を選ぶ人もいるでしょう。では、投票率が低いとどうなるか?
 直近の国政選挙・二〇一四年の衆院選挙の投票率は五二・六六%。自民党は、小選挙区では全有権者の約二五%の得票で、議席の七五%を獲得しました。「棄権」は、「投票した他人の選択にお任せ」ということになります。国民の思いと国会ですすむことがかけ離れてしまう一因になっています。
 実際に過去には、「(無党派層は)寝てしまってくれればいい」(〇〇年、森喜朗総理=当時)、「わが党は投票率はあまり高くない方がいい」(〇九年、古賀誠選対委員長=当時)などの発言を、政権を握っていた自民党の当時の幹部が繰り返しています。

政治を変えるカギは

 アンケートでは、投票に行く人も行かない人も「未定」の人も、安倍政権には厳しい評価をつけています。コメント欄にも、「基本的人権を制限する憲法改正は認められない」「アベノミクスと宣伝するけど生活は苦しくなった」「国益と言うなら医療・介護の充実を」などの注文が続きました。
 図3を見てください。一四年の衆院選では、棄権した人の数が与党の得票も野党の得票も大きく上回っています。この層が、政治を変えるカギを握っています。

図3

*    *

 参院選の大きな争点は「憲法改正」です。自民・公明両党とそれに協力する人たちが議席の三分の二を占めれば、「国防軍」を作り、人権を抑制する憲法改正に向け大きな一歩を踏み出すことになります。そうした狙いを持つ与党と「戦争法反対」「憲法守れ」と声をあげる市民と野党連合との対決が、七月一〇日になるわけです。
 公示日となった六月二二日、全日本民医連の藤末衛会長と四六の都道府県連会長は連名で、「ひとりひとりが主権者として投票に行き、政治を変え、一緒に希望ある時代を切り開いていくことを心から呼びかけます」としたアピールも発表しています。皆さんも読んでみて下さい。


声あげる10代はこう思う―

一生懸命考えて、投票すればいい

 今回の参院選から一八歳選挙権がスタートし、一八歳、一九歳の約二四〇万人が新たに有権者となります。安保法制に反対する高校生たちのグループT-ns SOWL(ティーンズソウル)の福田龍紀さん(18)と鈴木あいねさん(17)に聞きました。

*  *

 T-ns SOWLを作った時は、一個人として声をあげなくちゃ、という思いでした。安保法制は良くない、可決されたら確実に戦争に一歩近づいてしまう、次は憲法九条が変えられる、って。
 昨年九月一九日の強行採決までは、国会前で声をあげたりデモをやることで、廃案にできる可能性がありました。けど、採決強行で法律は成立しました。それでも安保法制を廃止したいし、立憲主義を取り戻したい。そう考えた時、自民・公明両党が過半数の議席を占める国会じゃダメだ、って思ったんです。選挙で変えるしかない、安保法制を廃止する政権に。
 「政治の事がよく分からない」というのは、その人のせいではないと思う。学校で選挙や政治のことを学ぶ機会はほとんどないし、政治家も身近じゃない。むしろネガティブなイメージが強いから。自分たちの行動にも、最初は否定的な意見もありました。でもテレビで取り上げられたりして、安保法制や政治のことに関心を持つ人が増えてきた実感もあります。
 若い世代は、必ずしも政治に関心がないわけじゃないんです。奨学金の説明会にはたくさんの同級生が参加していました。入学金のためにバイトしてる友達もいる。教育政策や税金の使い方には関心が高いし、不満もあります。そういう思いを表すために動く、声をあげる。それは普通のことだよ、って広げたい。投票もその一つ。行かなかったら変わらない。
 自分の投票や判断が正しかったかどうかは、将来分かること。「政治」ってものすごく広くて、全部分かることなんてない。だから今の自分が一生懸命考えて、一番正しい、自分の考えに近いと思った候補者や政党に投票したい。

図


選挙制度が有権者遠ざける

宇都宮健児弁護士に聞く

 「投票に行かない」一番の理由として挙がった「政治の事が分からない」。選挙制度の問題にとりくむ宇都宮健児弁護士(元日弁連会長)に聞きました。
 「選挙は、法律や予算など暮らしと深く関わることを決めるメンバーを選ぶこと。だから、とても大事だし、選挙の主人公は私たち有権者一人ひとりなんですよ」と宇都宮さん。ところが、日本の公職選挙法はそうなっていません。
 例えば選挙で配って良い宣伝物の数。東京都の有権者の数は約一〇六〇万人。ところが、東京都知事選挙では、候補者の名前や顔写真を載せたビラの数は、公職選挙法で三〇万枚に制限されています(衆議院選挙の小選挙区では候補者一人あたり七万枚まで=編注)。最初から全ての有権者には届かない仕組みです。団体が出す通称「法定ビラ」は、候補者の名前や顔写真の掲載は禁止。宇都宮さんが都知事選に出馬した時も、名前も写真もないビラに「ミスプリントではないか」と苦情が相次ぎました。
 さらに、日本の選挙制度が「公平」と言えない問題が「供託金」の存在です。立候補には、参議院選挙の小選挙区で三〇〇万円、比例代表選挙区で六〇〇万円が必要です(得票数が一定数以下だと没収)。G7参加国のうち、米、独、仏、伊の四カ国には供託金はなく、あっても一〇万円以下(英、カナダ)で、日本は桁違いに高額です。
 供託金やビラの枚数制限のルーツは、一九二五年の普通選挙法(投票権は二五歳以上の男子のみ)です。「国民に主権がなかった戦前に作られた仕組みが、国民主権を定めた日本国憲法の下でも続いているのは異常です」と宇都宮さん。
 過半数が貧困ラインを下回る母子家庭のシングルマザーや、新卒者の四割が不安定な非正規で働く若年層は、立候補すら難しい。つまり、政治が多様な声を反映する仕組みではないのです。

(民医連新聞 第1623号 2016年7月4日)