こころの健康 (3)ストレッサーの受け止め方(認知的評価) 代々木病院EAPケアシステムズ・臨床心理士 三浦文華
これまでに、ストレスは「きっかけとなる出来事(ストレッサー)」と「出来事の受け止め方(認知的評価)」、「対処の仕方(コーピング)」、「心身の変化(ストレス反応)」の4つから成り立っていることを紹介しました。今回は「出来事の受け止め方(認知的評価)」についてです。
きっかけとなる出来事(ストレッサー)があると、心身に変化(ストレス反応)が起きるということは、皆さんも想像しやすいのではないでしょうか。ですが実は、ストレッサーが直接、ストレス反応を引き起こすのではありません。同じ出来事を経験しても、ストレスを感じる人と感じない人がいます。また、ストレスだと感じても、どのような反応で、その強さがどの程度かにも個人差があります。その差に影響するのが、「出来事の受け止め方(認知的評価)」と「対処の仕方(コーピング)」なのです。
例えば、「上司に仕事を頼まれた」という出来事があったとします。皆さんなら、どう受け止めますか? 「自分には無理だ」と考えると、憂うつ感や落ち込みを感じることが多いでしょう。「なんで私がやらなきゃいけないんだ!?」と捉えると、イライラするでしょう。「興味深い仕事だ」と受け止めると、やる気が出そうですね。
これらの受け止め方に正解や不正解、良い悪いはありません。受け止め方には人それぞれパターンや傾向があります。ただし、受け止め方により高いストレス反応が出てつらくなってしまっている時には、自分のパターンから抜け出し、ストレス反応が少しでも小さくなるような別の受け止め方ができると良いのです。
まずは、ご自分にどのような受け止め方のパターンがあるか振り返ってみましょう。そして、「別の見方をするとどうか?」「◯◯さんならどう考えるだろう?」など見方を広げる練習をしてみましょう。大きなストレッサーを経験した時や、ストレス反応が強く出た時にも柔軟に考えられるようになります。こころを軽くできるよう受け止め方をたくさん探し、自分に合う受け止め方を見つけましょう。
次回は、「対処の仕方(コーピング)」です。
(民医連新聞 第1621号 2016年6月6日)
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