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民医連新聞

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相談室日誌 連載410 「権利としての生活保護」を活用し社会復帰へ(東京)

 Aさんはスナックでアルバイトしていた三〇代の独身女性でした。めまい・全身倦怠感など体調の異常を自覚していましたが、「医者にかかればお金がかかる」と、市販薬で対処していました。体調不良は続き、心配した雇い主の説得で当院を受診。コントロール不良の糖尿病との診断が出ました。インシュリン強化療法のため入院しました。翌日、医療費の支払い困難とのことでソーシャルワーカー(以下SW)が介入しました。
 Aさんの収入は手取り一〇~一四万円。増減があるが、店の客が減り、収入は減る一方だったと語りました。アパートの家賃は八万円。SWは生活保護の申請を支援しようとしましたが、本人は強く拒否しました。過去に窓口に相談に行き、嫌な思いをしたようです。国保の限度額認定の申請をすすめましたが、保険料の滞納があるという理由で、限度額認定証は交付されませんでした。やむなく国保の三割負担分を分割払いすることに。また入院期間を医師と相談、入院治療を最小限にし、検査や薬剤コントロールは外来で行うこととして退院しました。
 その数カ月後「具合が悪く動けない」と、Aさんから連絡が。働いていた店が閉店し、次の仕事が見つからず、家賃も払えなくなっていました。来院を促し、るいそう(標準体重より二割以上減っている状態)著明で再入院。生活費が工面できず金融業者から借金していたことも判明しました。
 SWは、今度こそ生活保護を使ってきちんと治療を受けること、そして生活を再建して社会復帰しよう、と根気強く説得しました。ようやくAさんも納得し、生活保護を申請・受理されました。その後は債務整理、住居の支援などを入院中に行い、退院。いまでは新しい仕事も見つかり、生活保護を離脱して暮らしています。
 生活保護受給者は増加の一方で、経済格差は一段と広がっています。生活保護は敷居が高く、悪いイメージを抱いている人も少なくありません。事例は「権利としての生活保護」を活用して社会復帰を支援したものです。これからもこの視点を持ち、とりくんでいきたいです。

(民医連新聞 第1620号 2016年5月23日)