被ばく相談窓口をつくろう 民医連のセミナーから(4) 相談活動の「安全性」
昨年開催した「被ばく相談員セミナー」で被ばく問題委員の雪田慎二医師(精神科)が行った講演を連載しています。四回目は、「相談活動における安全性」について。医療活動と同様、相談活動でも「安全性」は重要です。では、相談活動での「安全性」とはどういうことでしょうか。具体的に考えてみます。
傷つけない
まず何かショックな出来事があったときに、その出来事自体によって心の傷を受けます。しかし、その時受けた傷よりも、その後受けた扱いによってさらに深く傷つくことがよくあります。みなさんも経験があると思います。
例えば、大失敗をして落ち込んでいる時、「大丈夫。あなたのせいではないよ」と励まされるのと、「いつもきちんとやっていないから…」と責められるのでは、受ける傷の大きさが違います。日常的によく起きることですが、これは災害や事故の場面でも例外ではありません。
東日本大震災の原発事故被害者の中には、放射線被ばくの影響について「気にしすぎ」「考えすぎ」などと他者から言われ、事故後さらに傷ついた人が多くいます。相談活動でも、傷つけることがないよう十分注意しなくてはなりません。それが「安全性」です。
話せる雰囲気を作る
災害直後に「安全・安心・安眠」とよく言われましたが、それらが確保できる場所を提供することが解決の第一歩です。安全な場さえあれば、被害者の回復を妨げるストレスはかなり減らせます。
相談活動の場面では、「話しやすい」「秘密が漏れない」「経験を無理に話さなくていい」「温かみのある雰囲気」といった環境が安全な場と言えるでしょう。なかでも、「この人なら信用できる」「この人ならもう一回相談してもいいかな」と思えるような、温かみのある雰囲気づくりが重要なポイントです。これは、医療面接でも重視されていることで、研修医が患者とのやりとりを学ぶ時にも、重要な評価項目になっています。
安全な環境で話す中で、相談者が「大切にされている」「守られている」などと感じられることがとても大切です。みなさんも経験があるかも知れません。仕事で困ったことがあって上司に相談した時、「大切にされている」「守ってもらえている」と感じられれば、多少つらくてもがんばれるでしょう。ところがその逆なら、とたんに意欲が落ちたり、「こんな職場に居たくない」などと思うのではないでしょうか。
みなさんも日常的に実感しているようなことが、相談活動でも「安全性」として問われます。
続けて相談したいときの連絡窓口があることも大切です。一回の相談ではすべて話せず終わってしまうこともよくあり、「次はどこで聞いてもらえるのだろう」と不安になることもあります。
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次は「安全性」に関する事例と、恒常的な相談活動についてです。
(民医連新聞 第1618号 2016年4月18日)
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