フォーカス 私たちの実践 手指衛生を文化に あおもり協立病院 定期的とりくみとイベントで感染対策の基本を侵透させる
院内感染対策で最も重要なのは手指衛生です。あおもり協立病院では、さまざまな角度で現場へ介入し、手指衛生遵守率の向上をはかりました。課題を明らかにしながら対策をすすめ、徐々に手指衛生が浸透しました。第一二回看護介護活動研究交流集会で感染管理認定看護師の菊池久美子さんが行った報告を紹介します。
同院は病床数二二三床、デイケア、在宅介護支援センター、包括支援センターなども併設する病院です。
二〇一二年度に手指衛生の対策を大きく変更しました。それまでの介入を、菊池さんが認定看護師の資格を取得してから見てみると、効果が低いと感じたためです。病院全体に手指衛生を定義させるねらいで、WHOの『医療機関における手指衛生ガイドライン』と『手指衛生改善のための手引き』をもとに対策をすすめました。
まずは、課題を明確にする必要がありました。WHOの「手指衛生自己評価フレームワーク」で現状をチェックすると、手指衛生の正しい方法などの掲示が足りないことと、実施状況が分からず、またスタッフにも還元されていないことが課題に浮かびました。
■イベントで意識付け
年度初めに手指衛生の目標を立てることから始めました。部門ごとに考え、自部門の手指衛生のタイミングや衛生管理を確認してもらいました。それぞれの業務と関連した特色ある目標ができ、院内に掲示しました。
達成状況の評価に関しては、外部の病院などからも協力をもらいました。目標を自分たちで考えたことで職員の意識付けも強まり、積極的な姿勢が見られました。
七月には、全職員アンケートを実施。『手指衛生改善のための手引き』から設問を作り、知識を確認しました。特に理解が不足していたのが、アルコール製剤を使うか流水で洗うかの区別。また、「とにかく数多くやれば良い」と思っている職員もいました。ここから、とりくむべき課題の優先順位が明確になりました。
一一月には手洗い手技をチェック。各部門の感染対策リンクスタッフが、全職員が正しく手洗いできているか確認しました。特にできていなかったのは、「手首、親指のねじり洗い」「指先、手のひらのこすり洗い」でした。この結果と部門ごとの課題から、リンクスタッフが自部門の手洗い手順の掲示を見直しました。
■定期的に効果を確認
衛生状態を確認する院内ラウンドの方法も変更しました。その際はシンク周りなどのチェックに加え、「手指衛生五つのタイミング」(別項)ができているかどうかを抜き打ちで観察し、点数をつけて比較できるようにしました。
また、用度課と協力してアルコール製剤の使用量を算出し、遵守率を算定してみると、イベントを行った後は遵守率が上がるが、しばらくすると下がることが判明。しかし年度間を比較すると、遵守率は着実に上がったことが分かりました(グラフ)。
手指衛生5つのタイミング
1.患者に触れる前
2.清潔/無菌操作の前
3.体液に曝露された可能性のある場合
4.患者に触れた後
5.患者周辺の物品に触れた後
(WHOによるガイドラインより)
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こうして、手指衛生の実施状況が明らかにできました。また、遵守率を上げるには、長期的な介入が必要であると分かりました。
WHOも、改善には組織の現状や課題を共有することがカギだと指摘しています。定期的なとりくみと、イベントごとの評価、その効果の可視化とフィードバックが重要です。
まだ手指衛生が浸透し始めた段階です。継続的、長期的なスパンで変化する状況に合った介入が必要です。職員全員が正しい手指衛生を行えるよう、文化として根づかせたいと考えています。
(民医連新聞 第1618号 2016年4月18日)
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