民医連42回総会に詰まってたコト! 事務局長&青年記者トーク 民医連の掲げる「無差別・平等」が輝く 僕ら、すごい分かれ道に立ってるんですよね
今号は特集面も「新入職員歓迎」。職場では、民医連の方針学習が行われていることでしょう。そして、難しいコトバの行列に不安になった人がいるかも…。そこで! 青年記者・土屋結(民医連五年目・北海道民医連出身)と、全日本民医連の岸本啓介事務局長(京都民医連出身)が、半月前に行われた民医連の四二回総会についてトークしました。
(まとめ・木下直子記者)
岸本:三日間、取材で走り回ってたね。初めての総会はどやった?
土屋:方針を読み合わせたことはありましたが、どう決めるかは考えもしてなくて。北海道から沖縄まで代表が出て沢山話し合って、方針はこうしてできるんですね。
岸:発言は、三日間で九五三本、討論時間はのべ四八九〇分。民医連事業所の実践や発言が方針の構成要素で、文字通り「練り上げる」という作業。で、その方針の基は「民医連綱領」です。
土:額入りで病院にありました。
岸:壁に架けてあるけど、ただの飾りとは違う。直近の社会情勢や社会保障の動向を分析、組織課題を整理する、民医連という組織のいわば羅針盤。日常の医療・介護活動の中でも「綱領」を意識すると、いい仕事ができるよ。
足を踏み出した2年間
土:総会はどんな特徴があったでしょう? ひとことで言うと。
岸:ひとことでは無理!(笑) でもこの二年で「みんなが足を踏み出したんだ」と実感できた。代議員の感想も「皆が同じ方向で努力していた」とか「現場の多忙さに追われていたが、仲間の発言に視野が広がった」など前向きで。
たとえば今回一番発言が多かったテーマが「地域包括ケア」や「連携」。世界に先駆けて超高齢社会になる日本の医療介護の構想として出た「地域包括ケア」だけど、内容はケアには税金を使わず、質も人権もそっちのけになる危険性がある。民医連はそれを意識して「無差別・平等の地域包括ケア」を、地域の人たちと一緒につくろう、と呼びかけていた。話題が多かったのは、実践が始まっている現れやね。
土:僕は「医療過疎地なので民医連外の事業所とも協力しあって地域を守っている」という奄美の報告が印象に残りました。
岸:北海道も医療過疎の中で苦労しているもんなぁ。「連携」は民医連外の事業所や自治体との協同のほか「生活の分かる医療職・医療の分かる介護職」をめざす努力などもある。民医連外の事業所とカンファレンスをし、患者さんの人権を守る立場で民医連職員がリードし、良いケアをしているという報告もあった。またそんな患者中心の連携で「民医連らしさに誇りを感じた」と多くの仲間が語った。「無差別・平等」を掲げる民医連の存在が光る時代です。
土:「光る」といえば、分散会では東北や広島、兵庫の人が「支援をありがとう」と言っていました。民医連が、困っている人や、仲間の元に駆けつける組織なんだと実感した場面です。
岸:大震災からまる五年でも、先が見えないと東北の仲間が報告したけど、特に福島は、原発のことで長期戦になる。「民医連でも意識しないと風化する。議論を続けよう」と決意もしあえたと思う。
「民医連らしさ」の中で育つ
岸:民医連らしさ、という話が出たので…総会スローガンに「人間発達ができる組織」という文言が入ったよ。効率ばかり追求し、人を人間扱いしない新自由主義を意識したもの。民医連はその対極にあり「職員を大切に、人権感覚あふれる人に育てたい」と考えている。そしてもう一つ「民医連らしい実践の中で、人は育つんだ」ということも打ち出しました。
土:育成の報告や討論は思った以上にあり、本気だと感じました。
岸:今総会の記念講演を、熊本民医連で三〇年以上、水俣病にとりくんできた板井八重子医師にお願いしたのも、民医連の医療活動を示す実践の一つだから(八面)。「傾聴」や「患者に寄りそう」姿が学べた、との感想も多かった。
土:民医連と水俣病の関わりを知ったのは入職後です。考えれば北海道でもスパイクタイヤの粉じんと呼吸器疾患の問題にとりくむ医師もいる。共通する姿勢がある。
岸:民医連はおもしろいやろ。いま民医連の奨学生を「増やし育てる大運動」中だけど、医学生にそうした実践を知らせ「こんな医師になってほしい」と呼びかけて、決意する医学生が増えてるよ。
戦争法・社会保障と僕らの出番
土:「患者さんの立場」という話題では、苦しい人が増えているという報告も各地からありました。
岸:子どもから高齢者まで国民生活は厳しく、安倍政権の数年間で貧困がまた深刻化したと痛感したね。戦争政策や社会保障、経済対策…。どれをみても安倍政権は民医連の目指す方向とは相容れない。それ以前に、憲法違反の集団的自衛権の行使容認や戦争法を強行して「権力者は暴走しないため憲法を守る」という立憲主義も破った。夏にある参議院選挙は、もともと政党を選ぶ選挙だけど、野党が「安倍政権退陣」で一致したいま、民主主義を取り戻すか、このままかを選ぶものになるね。
土:ジャンボリーの仲間とこんな話をしました。「僕らは親の世代に『なぜこんな日本にしたの?』と思ったことがあったけど、次は自分たちが問われる番―」と。
岸:人生を振り返って「あの時、行動すれば…」と後悔したらあかん。戦争法(安保法制)反対の運動がかつてなく広がっているという報告も多かったけど、この運動は社会保障の課題でも、主権者・当事者が立ち上がれば変える力があると教えてくれている。
土:「保育園落ちたの私だ」という親たちの国会前抗議も起きましたよね。戦争と社会保障の関係に気づく人が増えるでしょうか。
岸:人の命を縮めるのは、「戦争」と「貧困」。「戦争反対より明日のご飯が大事」という人も多いけど、戦争と社会保障の関係は深い。戦争する国は社会保障に金を回せない。日本の軍事費は史上最高の五兆円を超えたけど、予算の五・六%。アメリカ並み(一五%超)になれば、戦争でしか儲からない国になる。いまなら引き返せる―。こう語れる僕らの出番や。
土:漠然とだけど希望が…。
岸:よし! がんばっていこう。
全日本民医連42回定期総会…全日本民医連では2年に1度、どういう方向で社会保障改善の運動やまちづくり、日々の事業をすすめるか、ということや、そうして決めた方針を推進する役員を選出して活動しています。その場が定期総会です。
今回の42回定期総会は、3月10~12日に福岡市内で開催しました。すべての県連合会から集まった603人の代表(代議員)の討論は3日間で953本におよび、時間換算でのべ4890分にわたる討論となりました。
討論から 戦争法反対・民主主義取り戻すために…昨年春の国会で提出された戦争法(安保法制)案に反対し、各地で運動した仲間の姿が生き生きと語られました。青年職員の呼びかけで毎日「昼休みデモ」を続け、地域の人たちも巻き込んだ病院(愛知)、戦争法に反対し民主主義を求める地域の若者集団の中心で青年医師たちが活動、地元の野党連合の結成にも一役(群馬)、「私たちの声を国会に届ける議員を私たちの手で」と、参議院選挙に向け、全国初の市民・野党統一候補を実現(熊本)など、いのちと健康を守る専門職として、また「日本国憲法を掲げ、すべての人が等しく尊重される社会」をめざす民医連職員として奮闘しています。
討論から 貧困の実態・受療権守る努力…雇用環境の悪化や社会保障の負担増政策が国民に与える影響や、行政への働きかけで制度改善を実らせた経験が出ました。身元引受人がない死亡診断書を10人書いた。断らない救急を通じて地域の窮状知る(北海道)、「受診を我慢していたお母さんが動けなくなった」と無料低額診療の相談が片親家庭の子どもから入る(東京)、劣悪な環境にある外国人学校の児童の健診にとりくみ、自治体で事業化された(長野)、重度身障児の窓口医療費無料復活を求め親たちとの運動で実現(山梨)など。
(民医連新聞 第1617号 2016年4月4日)