全日本民医連・第7回 職員の健康を守る交流集会 “健康な職場づくり” “ストレス・チェック”などで交流
一月一六~一七日、全日本民医連は職員の健康を守る交流集会を東京で開き、医師、保健師、事務などを中心に一三三人が参加しました。民医連職員の心とからだの健康を守るためのこの交流会は、二年に一度開催しており、今回が七回目。昨年一二月から義務化された「ストレスチェック(以下SC)制度」と、職場のメンタル不調の要因になる「パワーハラスメント」を中心に学習し、活発に議論しました。(田口大喜記者)
全日本民医連・職員健康管理委員会委員長の積豪英医師が問題提起。「新自由主義的な労働法制により、労働者が苦しめられる一方で、二〇一四年一一月から『過労死防止対策推進法』が制定されるなど、民医連の運動の成果が実りつつあります」と語り、「職員の健康管理は仲間を大切にする民医連という組織の真価が問われる課題です。『健康職場の五つの視点』と『健康職場づくり七つの課題』に基づく活動をすすめましょう」と提起しました。
■制度を活かそう
一日目は、全日本民医連精神医療委員会委員長の松浦健伸医師(石川・城北病院)が「SC制度での面接指導の向上のために」と題し、医師面接指導・事後措置までの流れを説明。面接場所の整備から話し方、自殺リスクの評価まで詳細な内容でした。また、相談活動に携わる側のメンタルヘルスを損なわないための注意点も確認しました。
グループディスカッションでは、各事業所の対応上の悩みや疑問を出しあいました。「面談を行う医師がいない」「体制をどうつくるか?」の質問に、全日本民医連理事・九州社会医学研究所長の田村昭彦医師は、「面談は医師には大変な負担です。多数の医師への呼びかけや育成を行うなど、積極的な医師養成と制度設計が肝要」と回答。「SC制度を上手に活用しよう」とよびかけました。
■ハラスメントについて
二日目は、筑波大学の三木明子准教授が「医療・介護事業所職員間ハラスメントの実態とその対応」と題して講演しました。
三木さんは医療・介護の現場で多く発生する三つのハラスメント(セクシャルハラスメント、パワーハラスメント、マタニティハラスメント)のうち、パワハラを中心に説明しました。パワハラは法律で禁止されておらず、労使紛争となるケースや、ハラスメントを受けた労働者が問題を抱えこんで離職や自殺に発展する例もあるためです。
厚労省の個別労働紛争相談(いじめ・嫌がらせ)件数は、二〇一四年で六万二一九一件と一〇年間で三倍以上に増えています。
また、「パワハラで訴えられるのを恐れて若手に注意ができないベテラン労働者も増えている」と、もう一つの問題も指摘。実際の判例を紹介しつつ「指導」と「パワハラ」の境界はなにかを示したうえで、「パワー(権力)を持つ人が、それを適切に行使せず、特定の個人に対する人格否定を含む行為がパワハラです」と解説しました。
三木さんはパワハラが起こる職場の特徴も示しました。(1)上司が反論を許さず、下からの意見が出しにくい「独裁・コミュニケーション不全型」、(2)緊張を強いられ仕事に追われる「過重労働強制型」、(3)ミスの許されない「ペナルティー重視型」の三つです。
予防のポイントは、(1)組織のトップが、パワハラをなくすという意思を表明する、(2)労働規定に関係規定を設ける、予防・解決についてのガイドラインを作成するなど、ルールを設ける、(3)従業員アンケートを実施するなどで実態を把握する、(4)教育する、(5)周知する、の五点。解決には、相談窓口の設置や、行為者に再発防止研修を行うことが重要だと語りました。
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閉会のあいさつで田村医師は「先駆的な事例が無い今、これからの現場のとりくみの豊かな経験を共有することが重要。成功例や苦悩の報告と学習を継続し、『健康で働きつづけられる職場』をつくりましょう」と締めくくりました。
健康職場の5つの視点
(1)個人にとって適度な質的量的負荷かどうか
(2)職員の安全安心は保たれているかどうか
(3)技術的に研修の保障がされているか
(4)使命が明確で評価されているか
(5)ライン内・職場間・職種間で少数意見が保障されコミュニケーションが向上しているか
健康職場づくり7つの課題
(1)保健師も含めた衛生管理者の専任化と管理部の連携
(2)保健師・医師面接や相談室の設置
(3)メンタルヘルス不全などの困難者を抱える職責者への「職場復帰支援チーム」の設置
(4)職員の「特定健診・特定保健指導」の向上
(5)予防的作業管理(筋骨格系疾患予防の人間工学的対策導入など)の重視
(6)職場環境改善のための予算化
(7)小規模事業所の衛生活動への援助
(民医連新聞 第1614号 2016年2月15日)