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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 入院中の転倒防止策 愛媛生協病院 目標は“ゼロ転び八起き” 一度も転ばず元気に退院を

 入院中、安全に療養するために、転倒や転落の防止は重要な課題です。愛媛生協病院(八〇床)の内科急性期病棟では、転倒件数の増加に気づき、対策を見直すことに。転倒について患者を捉える視点やスタッフの意識が変わり、転倒を減らすことができました。看護師の大森大さんの報告です。

 愛媛生協病院の内科急性期病棟(四〇床)では、二〇一二年八月から一年間で転倒報告が一〇一件ありました。特に一三年四月からの四カ月間は四三件と増加傾向でした。病棟の職員ひとりひとりが危機感を持ち、転倒防止策の見直しにとりくみました。

■転倒報告を分析すると―

 転倒報告の詳細を分析しました。すると半数が認知症患者で、特に繰り返し転倒する患者に認知症が多いことがわかりました。また、転倒時期は入院から一週間以内に集中していました。「身体機能が低下していて動けないだろう」という看護師の思い込みで、ADLの把握が甘く転倒対策が不十分だったことが推測されました。
 時間帯では日中より夜間に多く発生し、消灯後にトイレへ行こうとした際や、昼夜逆転している患者の転倒が目立ちました。また、発生場所は病室がほとんどで、ポータブルトイレを設置したことでひとりで行動したり、ベッド周囲の物につまずくなどして転倒が起きていました。

■患者の状態把握を強化

 こうした情報をもとに、転倒対策を見直しました。それまでの転倒対策は患者を担当する看護師に任されていました。
 まず、患者の入院時に入院前のADLの把握を徹底。複数の看護師で転倒に対するアセスメントを行い、カルテに記載することにしました。また、どの介助者でも患者の状態が分かるよう、常に最新のADLを書き込んだ表をベッドサイドに掲示。入院前後のADL、最新のADLに応じた移動方法やベッド柵の数、高さなども記載してあります。
 「転倒ラウンド」は毎日実施することにしました。新規入院患者の転倒へのアセスメントの評価や、不穏行動や転倒歴のある患者の転倒防止策をベッドサイドで確認し評価します。同時に、ベッド周辺の環境整備も行います。
 昼夜逆転の改善や防止に、日中、精神科の集団療法や病棟レクリエーションを導入し生活リズムを整えました。これは、認知機能低下の予防にもなります。不穏やせん妄のある患者は精神科につなぎました。拘束などの行動制限はなるべくしないよう工夫し、やむを得ず制限する場合も状態観察とカンファレンスを繰り返し、早めに解除できるようにしました。
 そのほか、毎月の転倒件数とその内容を部会、病棟運営会議、医療安全委員会で報告し、対応の評価と再検討を行いました。

■転倒ゼロを目指して

 一四年七月中旬からとりくみ始め、前年比で一五件減りました。
 入院時に徹底的にADLを把握したことで、病棟全体に「動ける患者は転倒の可能性がある」という考えが広まりました。さらに、転倒ラウンドの導入などによって複数の看護師で転倒防止策を検討する機会ができ、病棟全体の意識を高めることにつながりました。なお、転倒患者の傾向は見直し前と同様で、認知症患者の割合はさらに増えていました()。
 今後の課題は、(1)病状に合わせたADL評価と対策、(2)看護師の意識や知識の向上、(3)他職種や他の委員会などとの連携強化、(4)患者の個別性を考慮した環境整備の強化、です。日々変化する患者の状態を的確に把握し、個々に合わせた対策を行うことが必要です。
 対策は運用していく中で改良がすすんでいます。病棟の目標は「ゼロ転び八起き」。入院中に一度も転倒せず、入院前より元気になって退院できるよう、スタッフ全員で努力しています。

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(民医連新聞 第1613号 2016年2月1日)