「来たら元気になる」 高齢者憩いの場 ぼちぼち亭 ふくおか健康友の会
高齢者の孤立は社会問題です。「要介護認定を受けていない六五歳以上の高齢者のうち、孤食(ひとりで食事をとること)の人ほどうつを発症する」という調査(日本老年学的評価研究・JAGES)も。ふくおか健康友の会東・東支部(福岡市東区)では、地域のNPO法人とともに高齢者が気軽に立ち寄れる憩いの場、「ぼちぼち亭」を二〇一四年二月にオープン。月三回、食事会を開いています。
(田口大喜記者)
ぼちぼち亭の会場は城浜診療所のとなりにある、福岡地域福祉サービス協会の事務所を借りています。目の前には、ひとり暮らしの高齢者が多く住む城浜団地があり、そこに住む高齢者や、城浜診療所の患者さんが中心に参加しています。
食事会当日、午前九時、準備のためにボランティアスタッフ一一人が集まりはじめました。友の会会員や地域住民が中心です。「ぼちぼち亭」と書かれた手製ののれんを軒先に掲げ、食材の下ごしらえが始まりました。材料の買い出しもスタッフが「同じ物でもこっちのが安かね」と品質を吟味しつつも出費に気を配っていました。
献立は、ごはん、味噌汁、カレイのあんかけ、がめ煮、酢の物に、デザートのカキです。約三〇食分用意しました。大量の米を炊飯器にかけ、色とりどりの野菜を分担して刻んでいきます。「ニンジンはこの切り方でいいと?」、「この味付け薄いわー!」合間に交わされる冗談混じりの会話が賑やかで、終始笑いが絶えません。
「いい香りがしよるね」料理も完成に近づく正午前、参加者たちが続々とぼちぼち亭に集まってきました。その半数以上は団地でひとり暮らしをする人です。城浜診療所を受診後に参加する人もいました。
孤独忘れる
スタッフ含め三〇人でいよいよ、「いただきます!」。「おいしか~!」「いい味出とう!」「家ではこんな料理は作れんね」おいしいごはんに舌鼓、大人数で楽しい会話も弾みます。
普段は配食サービスで生活をしているという関久さんは八四歳。「心がこもっていておいしい。孤独を忘れさせてくれる」と、笑顔で語ります。参加者で最高齢、九三歳の稲吉フミさんは「ここに来たら元気になる。食事会の日がいつも待ち遠しい。指折り数えて待っとっとよ」。二人とも団地でひとり暮らしです。杖歩行のため、スタッフが車で送り迎えをしています。
食後は、歌を歌ったり、手指を使ったゲームを行いました。さらに、薬剤師の小金丸亮二さんが「過活動膀胱の予防と治療」について、城浜診療所の理学療法士の駕田拓朗さんが「座ってできる背骨の体操」、岩下早苗医師(須恵診療所所長)が健康講座を行いました。
口コミで参加者2倍
「参加者たちの笑顔が原動力」そう語るのは、ふくおか健康友の会の竹元美恵子副会長。スタッフは、高齢者の楽しそうな姿に、逆に元気をもらっているそう。
ぼちぼち亭のとりくみは口コミで徐々に広がり、発足当時から、参加者は約二倍近くになりました。賑やかな反面、今の会場では手狭になり、希望者が入りきれない可能性も出てきてしまいます。「もっと広い会場が欲しい!」と、口々に嬉しい悲鳴も聞かれました。
ふくおか健康友の会では、「らんちカラオケ」(南支部)や、「きんしゃいカフェ」(博多支部)など、他の地域でも高齢者の居場所づくりにとりくんでいます。
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「誰でも、いつでも立ち寄れる場所にすることが理想」と、竹元さんは語ります。「高齢者を一人にさせない!」という思いを行政に届け、協力してもらうように検討しています。
(民医連新聞 第1611号 2016年1月4日)