被爆者、原発被災者ささえる医療を 被ばく問題交流集会―広島で
一一月一四~一五日、全日本民医連が第一四回被ばく問題交流集会を広島で開き、講演・報告や被爆者の証言、討論会が行われました。八二人が参加しました。
被爆70年
被ばく問題委員会委員長の藤原秀文医師は、「今年は被爆七〇年。原爆被爆者の問題の原点に立ち返り、放射線の人体的影響を深めると同時に、福島第一原発事故被害者と交流し、原発事故の社会的影響を考える場にしたい」と基調報告をしました。
記念講演では、外務省出身で政治学者の浅井基文さんが、「被爆七〇年 核兵器廃絶に向けて日本の果たすべき役割」と題して講演。福島原発事故の問題について「わずか四年で原発再開の流れが起こるのはなぜか?」と問い、初動段階で事故の規模を低く見積もられたこと、東電の隠蔽体質などをあげ、「戦争が起きた際に日本に及ぶ影響の認識が欠落している」と指摘。「国際的視点を持った運動に発展させることが緊要」と語りました。
被爆体験も
原爆の被爆体験も聞きました。日本被団協の田中煕巳事務局長は、長崎で被爆した体験を語りました。一三歳の時、広島で被爆した小方澄子さんは、当時の凄惨な状況を涙を流しながら語り、「今が一番、戦争の危機にあると感じています。平和を願って体験を語り続けたい」と訴えました。
原爆症認定集団訴訟・全国弁護団連絡会事務局長の宮原哲朗弁護士は講演の冒頭、一〇月二九日に原爆症の認定を国に求めた「ノーモアヒバクシャ訴訟」東京地裁での原告一七人の全員勝訴を報告。核兵器の非人道性と、原爆症認定集団訴訟について説明しました。
指定報告では、被爆医療や被爆相談など、被爆者に寄り添うとりくみの報告が東京、大阪、広島、長崎からありました。
二日目は、順天堂大学医学部客員教授の大前比呂思さんが「低線量被ばくの健康影響について~『放射線リスクに関する基礎的情報』批判」と題し講演。研究者の視点から、多数のデータを示し、低線量被ばくの人体への影響や福島第一原発事故を例に、原発が持つ健康へのリスクを説明しました。
また、福島民医連が実施している甲状腺エコー検診について、医師、放射線技師、事務の三人が特別報告しました。
参加者から、検診準備についての質問や「学習を通じてとりくみを広げてほしい」と要望も出され、積極的な討論になりました。
まとめで藤原委員長は、「被爆者は年々減っているが、できる限りの思いを聞き、核兵器廃絶に向けた声を大きくしていきましょう」と呼びかけました。
(民医連新聞 第1610号 2015年12月21日)