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民医連新聞

民医連新聞

受療権を守る討論集会を初開催 無低診、制度改善、職員の視点の向上などを語り合う

 全日本民医連は一一月一三~一四日、「受療権を守る討論集会」を東京都内で開きました。三七県連から一三七人が参加。これまで「無料低額診療事業交流集会」として開催してきたものを国保法四四条や七七条、生活保護制度の改善など、権利としての社会保障の拡充を図り受療権を守る活動をどう発展させていくのか、討論する場に一歩すすめたものです。

 無料低額診療事業の実施事業所数は、二〇一五年九月で三六八施設と前回の調査と比べ三二施設増えました。取得可能な事業所のうち四七・二%で実施しています。
 全日本民医連社保委員長の田村昭彦理事が問題提起。たび重なる医療・介護制度や生活保護制度の改悪で国民の受療権がますます脅かされていること、一方で経済的困難を抱える患者の支援制度であるはずの国保法四四条や七七条が多くの市町村で制度化されておらず、実効性のあるものになっていないことにふれました。そして論点を「無料低額診療事業の具体的課題」「受療権を守る無料低額診療事業の拡充発展の方向性」「権利としての社会保障の充実」「受療権を守るための関係性の回復・構築」の四つにまとめました。
 立命館大学の唐鎌直義教授が「安倍政権の下で加速化する高齢者の貧困―我々に明日はあるのか―」のテーマで基調講演。無職高齢夫婦世帯の家計費目で社会保障給付費が一九九九~二〇一四年で四万円強も減っている一方、水光熱費など固定費と社会保険料は増えていること、勤労者世帯より高齢者世帯の方が実質税負担率が大きいことなどのデータを示しながら、高齢者の貧困の広がりを明らかにしました。

●指定報告●

 四本の指定報告がありました。

▼事例を可視化し行動に
 全日本民医連SW委員会から、森川尚子さん(福岡・健和会大手町病院)が委員会の二〇一二年の「医療介護費相談調査」について報告しました。事例をまとめ、調査で可視化することで、「困難な事例への対応力がより強くなることや社会保障改善につながる」「気づきは現場から。アンテナを高く掲げ、ソーシャルアクションの実行と継続が大切」と語りました。また委員会では現在、「権利としての社会保障を目指す実践」の事例集を作成中で、全国から三〇〇を超えるレポートが集まっていることも紹介しました。

▼「負担増50万円」利用者も発言
 制度を利用する当事者も発言しました。石川・特養やすらぎホーム入居者家族会の畑秀勝会長が、法人の酒井秀明専務とともに介護制度改悪の実態を伝えました。畑さんが住民税課税対象のため八月の制度改悪でホームで暮らす妻(介護度4)は補足給付が受けられなくなりました。入居費負担が年五〇万円近く増加したことを受け「まじめに働いて税金や年金を納めてきたが社会保障費はどんどん減らされ、怒りを感じている」と語りました。やすらぎ福祉会では事例を集めた『酷書』を作り、行政との懇談に持参するなど改善運動に活用しています。

▼街頭で続ける相談会
 東京・川島診療所の谷川智行所長は、中野駅前で毎月続けている街頭相談会について報告しました。
 最初は医療介護相談でも、よく聞くと生活そのものに問題を抱えている人も多いこと、参加した職員が「医療機関に来られない人のことを知らなさすぎた。待っているだけではダメ」「経済的理由で受診できない人が少なくない。社会保障の充実が必要」と気づく場にもなっていると話しました。

▼事例を捉える力を高める
 福岡医療団の西山洋子さんは、職員の視点を高めるとりくみを紹介しました。手遅れ死亡事例調査や日常の医療費相談の中で職員が困難な事例を見つけ問題点を掘り下げる力が弱いことに気づき、法人で事例交流集会を開催。事例のまとめ方を学習し、多職種でチームを組み、手遅れ死亡事例を見直すことで、社会的背景も含めて患者を捉える視点が明確になり、人権意識が高まりました。

●各地のとりくみを広げて●

 二日目に行った分散会では、事前アンケートや問題提起などを元に討論。「無低利用が長期化する人も。支援のあり方も考え直さなければ」「国保法四四条も含め、各制度のハードルが高すぎる」など、現在の無低事業の課題や国保法四四条などの運用の現状を話し合いました。
 また、この分散会で出された特徴的な事例は、最後の全体会で紹介されました。無低診患者の薬代に市の助成制度を獲得(北海道・勤医協苫小牧病院)、無低診の事例で職員が学んでいる(千葉健生病院)、民医連外の民間病院が無低診のすすめ方を問い合わせてきた(宮城・坂総合病院)、小法人の診療所でのとりくみ(京都城南診療所)など
 集会のまとめで、田村理事が受療権を守る活動の今後の課題として「制度に敏感になり社保活動をすすめる」「他医療機関や共同組織との連携」「職員育成」の三点をあげました。「お互いに解決のヒントを出し合い、受け止めた。集会で感じたことを広げてください」と呼びかけました。

(民医連新聞 第1610号 2015年12月21日)