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民医連新聞

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新専門医制度スタート(下) 私たちはどう向き合う? 地域医療を後退を許さず民医連の研修の充実を

 二〇一七年度に開始予定の新専門医制度を考える連載の最終回は、今後のとりくみについてです。

 新制度の全貌が明らかになってきました。民医連の「見解」(今年一月)で懸念した「地域医療への負の影響」が現実になりつつあります。運用主体の日本専門医機構は、「地域医療への配慮」を強調しますが、研修施設群やプログラム作りは、大学・大病院中心にすすめられているのが実際です。制度開始で多くの若手医師が大学や大病院へ集約されることは、ほぼ確実でしょう。

医療提供体制再編の「道具」に

 影響は甚大です。第一に、専門医・専門医療の集約化で、進行中の医療提供体制の大再編(病床機能分化、地域医療構想)が決定的になります。第二に、専門医定数を定めれば政府・厚労省の悲願の医師数統制が可能になります。
 また、専門医資格の付与権を統制し、医師がどこで働くかも制限できるようになり、結果として医療サービスの提供量を政府がコントロールできることにも。将来的には診療科の広告や標榜とのリンクも予定されています。そうなれば、一定の力量を持った総合医がどの地域にもいて、高水準の地域医療を行ってきた日本のシステムが、大きく後退します。
 専門医療集約化は合理的に見えますが、国民が医療にアクセスする権利を脅かす危険があります。
 また、「特区」が設置しやすくなり、患者申し出療養制度を突破口とする混合診療の拡大・全面解禁へとエスカレートする悪条件が重なります。医療の市場化・営利化につながる構想です。

 全日本民医連はこの間、日本医師会や全日本病院協会、全国自治体病院協議会、日本プライマリ・ケア連合学会などの幹部と懇談を重ねてきました。共通して出されたのが、新制度が地域医療に与える負の影響や大学・大病院による支配構造が再燃する問題、結果として医療費抑制への懸念でした。
 地域の医師不足や専門医の身分保障、専門医資格を取れない医師・更新できない医師はどうなるか? など課題は山積です。国民目線で新制度をより良いものにするとりくみはこれからです。民医連以外の医師・医療団体と協同し、地域シンポの開催や国や機構への申し入れなどを具体化しましょう。

民医連の対応について

 民医連は「自前」の医師養成にこだわりつつ、本格的に多施設協同の医師養成の時代に入ることを認識し、事業所での専門医教育の質を同業者にも認められるレベルで維持していく必要があります。
 基幹施設になれなくても、症例数や指導体制を有するハブ的な民医連「連携施設」を、オール地協・オール民医連で創り上げる、という大胆な提起なども検討していきたいと思います。
 これまでも強調してきましたが、医学対や、初期研修の意義と重要性が、今まで以上に大きくなっています。民医連外での研修期間が想定されるため、個々の医学生・研修医に民医連への強い共感を持ってもらうことなしに、後継者養成は成功しません。一〇〇人の中低学年奨学生を作る大運動を成功させることが、医師養成新時代にブレークスルーを起こす第一歩になると確信しています。

増田剛(全日本民医連副会長・医師部長)

(民医連新聞 第1608号 2015年11月16日)