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民医連新聞

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里子・里親 文・朝比奈 土平 (15)「アックンのこと好き?」

 里親制度や里親体験談はそれなりに本があるけれども、恥ずかしながらほとんど読んだことがない。
 「子どもの村」というNPO法人が「すべての子どもが家族の一員として育ち、愛され、尊重され、守られる」というビジョンで活動していて、お母ちゃんの元同僚が働いている。アメリカの代替養育当事者達が日本に来てワークショップをするというので参加したのが春だった。一〇人くらいの青年が来ていた。
 そこで『国連子どもの代替養育に関するガイドライン/SOS子どもの村と福岡の取り組み』(福村出版)という本を手に入れて、国連などで「代替養育」という言い方をしていることも、初めて意識した。
 里親を転々として虐待や兄弟分離を強いられた人。ギャングへの坂道を、当事者のネットワークのメンターとの対話によって踏みとどまった人。当事者を組織し、政府や議会にロビー活動して代替養育のより良い制度化に努力している人。そしてそんな様々な経験を異国で自分の言葉で語る当事者たち。
 「私たちはみんな“曖昧な失い”を経験しています。肉親との関係を、いつ失ったのかわからないのです」という言葉が深かった。「喪失」でなく「失い」と言った。
 アキラの「失い」の形はどんなもので、得たものは快適だろうか。そんなことをよく考えるようになった。
 「アックンのこと好き?」と不意に聞いてくるとき、「ううん。好きやないよ」とこたえても、彼の顔は曇らない。すぐに「だいだいだーい好きやけんねえ」とつながるのを知っているみたいにニヤニヤしている。
 B君と面会を重ねて、やがて彼が我が家に委託されるとしたら、その時アキラはB君をどう理解するのだろう? それが自分を理解することにもなるのか。B君が実親の元に帰る時は、どう受けとめるだろう。
 一〇月、キャンプシュワブのゲート前で五歳の誕生日を迎えたアキラ。SEALDsの本の表紙の国会議事堂を見て「なんで力(ちから)タンナーパ(伊江島の国守り英雄伝説)出てこんと」と言った。「君でしょ」と呟く。
 里親を検討されている読者にひと言。「気軽にぜひ。僕にもできた」(G馬場風)。…できてんのか?
 最終回はお母ちゃんが書きます。

(民医連新聞 第1607号 2015年11月2日)