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民医連新聞

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第12回全日本民医連 学術・運動交流集会in大阪 国際フォーラムでの報告から 健康権実現のための保健医療団体連合 チェ・ギュジン企画局長 新自由主義が引き起こした韓国のMERS大規模感染

 交流集会二日目の国際フォーラム(第四セッション)では、今年五月に韓国でMERSが流行した背景に、同国が打ち出した医療産業化政策があったことが報告されました。MERSは、OECD加盟国では数人の発病で収まる感染症です。ところが韓国では五月からの二カ月で、三六人の死者を含む感染者一八六人、また隔離者は、一万六〇〇〇人を超えました。健康権実現のための保健医療団体連合の崔圭鎭(チェ・ギュジン)企画局長の発言を紹介します。

営利企業が医療に参入

 韓国は現在、朴槿恵(パク・クネ)政権ですが、その父親、朴正熙(パク・チョンヒ)政権から病院の民営化、民間病院の政策がすすめられてきました。その結果、OECD加盟国の中で公的病院が最も少ない国になりました(国内の病床の九〇%が民間経営)。
 そして一九九〇年代から新自由主義的な改革の中で、大企業・大財閥が病院を経営することに。韓国の大財閥「サムスン」と「現代(ヒュンデ)」は、アジアで一番大きい病院をソウルにつくりました。地域にあった公共・公的医療が減らされる中、これらの財閥病院が患者をとりこみました。

感染を隠した大病院

 MERS感染のニュースがあったのは、今年五月です。感染した患者さんはサムスン・ソウル病院に行ったのです。ところがこの病院は外観はすばらしいのですが、医療の基本である感染症対策がとられていませんでした。たとえば、伝染病を防ぐために基本的な施設である陰圧室はおろか、隔離病室も持っていませんでした。同院は病気を治療するどころでなく、病気を発信する場所になりました。
 もっとひどい問題も発覚しました。MERS患者がいることを、病院が隠していたのです(病院が国に隔離者リストを渡したのは六月に入ってから。さらに患者リストは三〇人だったが、これに含まれていない実際の患者は五〇人余りだった)。また、大企業と癒着し、その機嫌を取らなければならない政府は、患者がどこの病院で発生したかを公開しませんでした。
 その結果が、三六人の死者を含む感染者一八六人、一万六〇〇〇人を超える隔離者の発生に至りました。隔離された人の家族のことまで考えると、この規模、この事態がどんなにひどい状況だったかがお分かりになると思います。またこの感染事件は国内経済にも影響し、韓国のGDP値が〇・四%低下しました。

医療問題だけではなかった

 MERS事件というのは、韓国では単なる医療だけの問題ではなく、労働や韓国の社会全体の矛盾を明らかにした事態でもあります。サムスンは院内でMERS患者が発生しても、非正規のスタッフについてはマスクなどの感染予防の装備を与えていませんでした。
 またこんな事もありました。LGという大手企業がありますが、その労働者にMERS感染が疑われる人がいました。本人がそれを会社に申告したにも関わらず、会社側は中国出張を命じました。結局、その人は出張中に発症し、中国で隔離されました。

*   *

 韓国で今回起こったMERSの事態は、新種伝染病は一国の問題ではない、ということを明らかにしました。ここに集まっていらっしゃる皆さん、また他の国々でも、今回の韓国での事態を重要な教訓として考えてほしいです。
 人類の命、生命を救うためにも保健医療関係者、そして社会運動をしているすべての人々の国際的な連帯が何より重要な時期だと思います。


※MERS=Middle East respiratory syndrome(中東呼吸器症候群)。二〇一二年に中東で発生した感染症。WHOによると、第一例発見から今年六月までに一三三八人が感染し、少なくとも四七五人が死亡している。感染者は世界二六カ国で見つかっているが、多くがアラビア半島とその周辺の国々。アジアでは韓国のほか、中国、フィリピン、タイ、マレーシアなどでも感染者が出ている。

(民医連新聞 第1607号 2015年11月2日)

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