フォーカス 私たちの実践 デスカンファレンス 千葉・船橋二和病院 一般病棟でデスカンファレンス 緩和ケアスタッフの負担軽減
一般病棟でのデスカンファレンスについて、第一二回全日本民医連看護介護活動研究交流集会で報告がありました。千葉・船橋二和病院(二九九床)の病棟看護師、里見潤さんの報告です。
里見さんの病棟は、消化器、泌尿器外科などの急性期病棟です。
短期間のパスで手術目的の患者さんが入退院していますが、もう一つの側面として、診断から看取りまでの緩和チームとしての役割も担っています。これは、高齢化を見据え、新保和広医師が呼びかけたもの。看護師も知識を深め、認定看護師の資格をとるなど、積極的に関わっています。
しかし、一般病棟での緩和ケアには報酬もつかず、看護師自身の不安や精神的負担も軽くありません。そこで、少しでもスタッフの負担を軽減できればと、デスカンファレンスを始めました。
二〇一三年三月~一四年三月の間、病棟スタッフにとって印象深い八症例をとりあげ、主治医とともに実施しました。
内容は、(1)入院から逝去までの経緯、(2)治療やケアに対する疑問や問題点、(3)効果的なケアとその結果、(4)スタッフが感じていた辛さや思い、(5)今後に活かせることなど、スタッフが当時抱えていた問題について確認し、フィードバックすることを目的にしました。
■30代末期がんの患者さん
そのうちの一例、三〇代のAさんの事例を次のように話しあいました。下行結腸がんで多発肝転移、骨転移があり、夫と小学生の子どもがいる女性でした。
二〇一二年に結腸を切除した後、通院して化学療法を行いましたが、病状が悪化しました。衰弱したため術後二年足らずで治療を中止。ボディーイメージの変化や子育てなど、身体的、社会的側面から疾患の受容は困難を極め、感情的に泣いてしまうなど精神的な苦痛が強いことも見受けられました。骨転移による疼痛が増強したため入院。本人と家族の希望でセデーション(鎮静)を開始。二〇一四年春に亡くなりました。
患者本人はもちろん、学童期の子どもに対して、母親の余命を含む病状告知をどう行うべきか? 看護的な関わりをどう持つか? など家族看護の面でも悩むことの多い症例でした。
デスカンファレンスでは、セデーションの効果が不十分であり、患者自身や家族に苦痛を与えてしまった問題点などが出ました。
一方で、患者の変化を日々詳細に家族に説明し、ケアへの参加を促すことで刻々と変わる病状が受容できていたこと、病室をできる限り個室にすることで、自宅にいるかのように患者が過ごし、厳しい病状であっても笑顔が絶えない環境調整ができたなど、肯定的な面もあがりました。
スタッフが感じていた辛さは、患者からの様々な苦痛の訴えに寄り添うことしかできなかったこと、また、患者の子どもとの関わりでは、母親の病状を理解してもらうことや、本人の心のケアなどを目的とした面談が困難を極め、日々疲弊や無力感を感じていた、などの点でした。
■次につながる学習の場
多忙な一般病棟で緩和ケアに携わるスタッフは、知識や時間のなさというジレンマを抱えたまま、それらが共有、発散されずに摩耗し、疲弊しています。緩和ケアへの関わりに消極的になる要因にもなり、負の連鎖を生み出していることが明らかでした。
デスカンファレンスの場を設けることで、他の看護の実際を聞き、自身の感情はチームでも共有できるものであると再認識しました。これが、次の学びや、積極的な緩和ケアにつながる効果的な教育の場になりました。また、医師や看護師、職種を超えて、治療方針や苦悩を報告しあうことで、職種間の信頼と連携を深めることができる場としても機能しています。
(民医連新聞 第1606号 2015年10月19日)