「改悪」 現場から問う 介護保険利用料の2割化 負担増は生活の質に影響 すでにサービス見直す人も
「一定の収入」がある人を対象に、八月から介護保険サービスの自己負担額が二割負担になりました。利用抑制などの影響は出ているのでしょうか。(土屋結記者)
今年八月から、合計所得金額※が一六〇万円以上の人は介護サービスの自己負担額が二割に値上げされました。単身で年金収入のみの場合だと年収二八〇万円以上が対象で、これは六五歳以上の上位二〇%に該当する水準とみられます。
※収入から公的年金等控除や給与所得控除、必要経費を控除した後で、基礎控除や人的控除等の控除をする前の所得金額。
■サービス見直しの実態
首都圏でケアマネジャーとして働くAさんが状況を寄せてくれました。担当の利用者三八人のうち、二割負担になったのは四人。うち二人がサービス内容を変更しました。
▼Bさん=通所、訪問系サービス、福祉用具を利用。七月の自己負担は二万二〇〇〇円。負担をなるべく抑えるため、介護ベッドのレンタルを止め、自費でベッドを購入。
▼Cさん=通所、訪問系サービス、福祉用具を利用。二割負担になると負担は月額約七万円になるため、福祉用具利用の見直しとヘルパーの回数を減らすことに。主たる介護者の家族は製造業でノルマに追われる仕事と介護の両立に苦労している。また体調も不安で、このサービスで生活を続けるのは困難と思われ、必要に応じて見直していくことに。
デイサービスや訪問看護といった「顔が見えるサービス」よりも、福祉用具のレンタルを見直す傾向です。自費で購入するほか、「無くても何とか生活できる。もう使わない」と言い出す利用者もいます。
「二割負担が始まってからまだ時間が経っていないので、大きな影響が出てくるのはこれからでしょう。情報を集め、注視しておくことが必要です」とAさんは懸念します。
■使える制度はあるか―
二割負担の打撃を回避する手立てはないのでしょうか。Aさんは「高額介護サービス費」という制度の活用をすすめています。月の負担が一定額以上になると償還払いされる仕組みです。二割負担の人は、自己負担額が月額四万四〇〇〇円を超えると利用できますが、償還払い以外に方法がなく、利用者は一時的に費用負担しなければなりません。
二割負担になった四人全員がこの制度を知りませんでした。保険者側が十分に周知していないのが実態です。他にも「高額療養費・高額介護合算療養費制度」があります。「私たちが制度を熟知することで、利用者が必要なサービスを削らざるをえない事態を少しは防げます」とAさん。
障害者施策や税金関係など、ケアマネジャーの基礎資格によっては、一人では対応しきれないことが多々あります。全国各地の事例を共有し、法人や全国レベルで対処していくことも必要でしょう。
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「ケアマネには『介護保険負担割合証』の確認作業が増えました。毎年発行する経費も、税金の無駄遣いだと思います」とAさん。「誰も得しないひどい改悪です。三割負担の導入やマイナンバーで預貯金も線引きに使うと言われています。とうてい許せません」と語りました。
(今号でこの連載は終わります)
(民医連新聞 第1605号 2015年10月5日)