フォーカス 私たちの実践 糖尿病患者支援 青森・健生五所川原診療所 血糖コントロール困難な患者 自治体との連携で改善
青森・健生五所川原診療所は内科診療所です。通所リハに加えて、今年七月から訪問リハも行っています。診療所では、外来受診時の指導だけでは血糖コントロールが難しかった糖尿病の患者に、自治体と連携して支援した結果、改善しました。同診の金田明子看護長の報告です。
糖尿病歴一四年のAさんは、ひとり暮らしで生活保護を受けている五〇代の男性です。自分の名前以外の文字が書けず、知的障害はありそうですが、詳細は不明です。他の医療機関でインスリン自己注射が導入になり、以降は五所川原診療所に月二回の外来受診で経過をみていました。
しかし、HbA1cが安定せず、一〇%を超えることもしばしば。カンファレンスを行い、診療所だけでは原因を追及することは困難と判断し、五所川原市の「糖尿病患者支援事業」を利用することにしました。
この事業は、「医療機関と地域が連携し、糖尿病患者の合併症・重症化予防につとめ、自己管理ができるよう支援する」とかかげた同市の事業です。〇七年に県のモデル事業として始まり、その後も継続されています。医療機関から情報提供があった糖尿病患者に対し、健康教育や生活指導を実施しています。
行政のかかわり
自治体からはまず、本人の状況確認と自宅訪問の了解をとるため、患者宅に電話をします。同時に、患者自身の治療の意思も確認します。
そうしてAさん宅を訪問した市の保健師と生保ケースワーカーがその結果を診療所に報告してきました。Aさんが調理を鍋ひとつで行っていたことが、コントロール不良の要因の一つとみられました。市の栄養士は、本人の病状に沿った献立を考案。三回にわたって自宅を訪問し、文字が苦手なAさんのために、写真を使って調理方法や野菜の選び方、買い物のしかたなどをアドバイスしました。また、万歩計を使い、一日の歩数を記録するなど、運動面での指導も行われました。
生協組合員も協力
診療所は、インスリン自己注射の手技をAさんとおさらいしました。これまで注射の痛みを避けるため、毎回腹部の同じ部位に注射していたことが分かり、皮膚が色素沈着し、やや硬くなっていました。
そこで、Aさんに一週間毎日診療所に来てもらい、自己注射を指導しました。パンフレットやチェックリストを使って実施手順を一つ一つ確認。Aさんのトレーニングだけでなくスタッフも、確実な手技が獲得できました。
また、できていなかった眼科への受診をすすめました。しかし、「問診票が書けない。一人では困る」とAさん。慣れない医療機関に行くのは抵抗感も大きいと思われたため、近くに住む医療生協組合員さんに同行を依頼。無事に受診となりました。
笑顔が見えた!
その結果、AさんのHbA1cは八・五%まで下がりました。Aさんの表情も明るくなり、自分が多くの人に見守られているという実感が持てたことで治療に前向きになり、毎日の運動も続けられている様子です。
診療所スタッフもAさんの支援に関わる中で、Aさんの表情の変化に、その効果を実感することができました。これがきっかけで、より分かりやすく声かけするよう心がけるようになり、糖尿病療養指導士の研修を受講するなどの努力にも結びついています。
「行政と連携して見守りを続け、合併症を予防するためにこれからも努力したいです」と金田看護長は語っています。
(民医連新聞 第1604号 2015年9月21日)