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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 夜間を想定した避難訓練 福岡・健和会複合施設 少ない人員で避難させるには訓練で「想定外」を無くす

 九月は防災の話題を。福岡・健和会では、高齢者向け優良賃貸住宅(以下、高優賃)を含む複合施設で、夜間を想定した消防訓練を行いました。職員配置の少ない夜間、高齢で認知症や要介護認定を受けている入居者も多く、どう安全に避難させるのか。訓練を行うことで、想定していなかった課題も明らかになりました。施設管理担当の和田義廉さんの報告です。

 複合施設は、二〇一二年四月に開設しました。一二階建ての建物には、一階に生活支援センターと保育園、二階に大手町診療所、訪問看護ステーション、ケアプランセンター、ヘルパーステーション、ユアーズ企画(法人関連事業所)、共同組織本部、北九州社会保障推進協議会、北九州医療・福祉総合研究所が入っています。三階以上は高優賃六〇戸が入っています。消防訓練は毎年行ってきましたが、夜間を想定した訓練は初めてです。
 現在の入居者は、五五戸に六〇人。要介護認定を受けている人が半数、認知症の人もおりハンディキャップがある人が多く生活しています。災害時に安全に避難させるためには、万全の備えが必要です。日中は下階の各施設の職員が対応できますが、夜間になると、ヘルパーステーションと生活支援センターの宿直者、二人のみ。少しでも早く現場の状況を確認し、初期消火や消防への通報、避難支援を要請することが鍵です。

「深夜の火災」想定

 訓練では、深夜二時に三階で火事が発生した想定にしました。警報音が鳴り響くと同時に、一階の生活支援センターにある自動火災報知設備の画面に、火災場所が表示されます。
 生活支援センターの宿直者が画面から発生場所を確認し、携帯電話・送受信用受話器・懐中電灯を持ち、現場の確認に走ります。そして、廊下に設置された屋内消火栓から消火器を取り出し、初期消火を行います。二階にいるヘルパーステーションの宿直者は、一階の生活支援センターへ急行し、火災現場からの連絡を待ちます。
 初期消火が失敗した場合、消火栓の上部にある火災報知器に送受信用受話器を挿し、生活支援センターに連絡。待機していた宿直者が全館放送を行い、火災場所・避難場所を伝えます。同時に、消防署に通報します。
 入居者の避難誘導と支援は、複合施設に隣接する職員宿舎に入っている職員たちが担当します。高優賃の火災報知器と職員宿舎の報知器は、連動することになっています。宿舎の職員たちは現場に急行し、二人一組で高優賃入居者の避難誘導にあたります。
 避難場所は、火災発生場所と反対側の外階段踊り場。慌てて階段を降りることで、転倒などの二次災害が起きないよう、待機することにしました。

報知器が鳴らない!

 訓練では、実際に各機器を動かしてみると、想定外のことがありました。職員宿舎の報知器が鳴らなかったのです。連動する設定にされていませんでした。また、職員宿舎の入居者の教育や意識付けも必要です。今回の訓練では、複合施設の職員が宿舎の住人役をしました。次回以降、職員宿舎の入居者に参加してもらうことも検討しています。
 避難誘導のために集まった職員をどう配置するかも課題でした。自力で避難できる入居者、支援が必要な入居者を明確にし、各階の配置人数を決める必要がありました。緊急時でも入居者の心身状態や必要人員が一目で分かる表を用意しておくことで、スムーズに避難誘導ができます。
 高優賃の入居者からは、「事前にていねいな説明会を開いてくれて安心感があった」「訓練に参加してより安心して過ごせる」などの感想がありました。また、「いろいろなパターンを想定した訓練をして欲しい」という積極的な要望も寄せられました。
 夜間は少人数で対応するため、一人で複数の役割を担います。何を優先するのかも明確にして、手順や機器の操作を熟知しておかなければなりません。訓練を継続する大切さを改めて確認しました。

(民医連新聞 第1603号 2015年9月7日)