「改悪」現場から問う 介護報酬引き下げ(上) 引き下げ分取り戻せず廃業する事業所も
四月から介護報酬が二・二七%引き下げられました。全日本民医連は七月九~一〇日、「介護報酬二〇一五年改定検討会議」を開きました。“史上最悪”の報酬引き下げが現場を直撃しています。
「今回の改定は昨年成立した『医療・介護総合法』の具体化です」。全日本民医連の林泰則事務局次長は指摘します。同法は病床削減と地域包括ケアシステムの確立を打ち出し、介護分野では「総介護給付費の抑制」と「保険給付の重点化」を強調。重度者や認知症高齢者の対応を重点化する一方、全体としては大規模な抑制です。
九州地方のある県では、改定報酬実施前の三月末までに二一事業所が閉鎖と報道されました。報酬引き下げで事業継続の見通しが立たないためです。
「加算」がとれない
二・二七%引き下げは加算を加味した数字で、基本報酬部分は四・四八%引き下げ。新規加算を算定できなければ、引き下げだけがのしかかります(図)。
新規加算は算定のハードルが高く、算定は困難です。全日本民医連が加盟事業所を対象に行った調査(一〇三法人が回答=六月末現在)では、要件を満たせず加算をとれない実態が浮き彫りに。
通所介護の場合、認知症ケア加算が新設されましたが、回答した二〇三事業所のうち、算定は二五カ所(一二・四%)。算定できない理由は、「研修受講者を確保できない」「研修の受け入れ定員が少なく、受講したくてもできない」。同様に、中重度ケア体制加算の算定は四四カ所(二二・六%)。利用者要件(要介護3以上の利用者が全体の三割超)が満たせないのです。
目立った加算の新設がなかった認知症グループホームも厳しい状況です。従来の「夜間体制加算」の要件が見直されたものの、「当直者を配置すると赤字になるため、加算はとれない」のが実情です。「常勤職員を非常勤に切り替えないと成り立たない」「人件費削減の結果、職員の夜勤回数が増加」などの事態が起きています。
集中減算が追い打ちに
さらに特定事業所集中減算の「拡大」が追い打ちをかけます。居宅介護支援事業所が作成したケアプランのうち、紹介先が特定の事業所に集中した場合、減算します。これまで対象は訪問介護、通所介護、福祉用具貸与で、集中割合が九割超で減算でしたが、これを全サービスに拡大し、「集中」割合も八割に引き下げ。九月から来年二月までの実績を判定し、該当すれば来年四月から減算です。
医療系サービス、とりわけ訪問看護が対象となったことは深刻です。訪問看護は主治医の指示が前提で「医療と介護の連携」の必要が高く、集中の度合いも高くなります。連携に困難をもちこむもので、現場から「実態とかけ離れている」「年間六〇〇万円の減収となる」と悲鳴が上がっています。
全日本民医連は「基本報酬底上げを中心とした再改定」「集中減算の対象から訪問看護を除外するなど現行報酬の大幅改善」を求めています。
(丸山聡子記者)
(民医連新聞 第1601号 2015年8月3日)