今、声あげよう “戦場の看護師”にはならない 全学生で「戦争法」反対決議へ 東葛看護専門学校
「本気で止める!」。一〇代、二〇代が国会で審議中の戦争法案に反対して立ち上がる動きが全国に広がっています。これは医系学生も例外ではありません。東京・東葛看護専門学校の学生自治会は、学校創立から二〇年の歴史で初めて、「戦争法案反対」の決議を準備中です。(丸山聡子記者)
七月三日の夜。時折大きな雨粒が傘をたたく悪天候の中、SEALDs(シールズ=自由と民主主義のための学生緊急行動)が呼びかけた戦争反対国会前行動に三〇〇〇人が集まりました。
国会にぶつけるコールは、「戦争するな!」「憲法守れ!」「勝手に決めるな!」「国民なめんな!」「民主主義ってなんだ?」「なんだ!」。
その中に東葛看護学校の学生自治会役員と学内の平和ゼミナールの有志六人の姿もありました。
「学校に戻って、みんなに話さなくっちゃ。やばいよ」。ミキさんは、興奮気味につぶやきました。二年生の自治会役員。ここに来る前は「戦争法案のことを言っているのは、平和学習を重視しているうちの学校だけなんじゃないかと思ってた」。ところが、国会前にはたくさんの人が集まり、同世代がコールしている。とても驚きました。
「来られなかったクラスメートに、この空気を伝えたい」と、スマホで写真や動画を撮っていたのは三年生のコバヤシくん。コールする学生をじっと見つめた後、用意してきた「戦争させない」の紙を掲げ、声を合わせました。
■「戦争は絶対にダメだよ」
きっかけは六月上旬。学生たちは山田かおる副校長から「日本を戦争する国にしようとする法案が国会で審議されているよ」と聞きました。「頭をガツンとやられたような気がしました」と言うのは、自治会長のマイさん(三年)。「何か行動を」と、すぐに自治会で話し合いを始めました。
マイさんの頭に浮かんだのは八〇代の友の会会員さんから聞いた戦争体験。子どもの頃から戦争に疑問を持たぬように教育されたこと、戦死した兵士の八割は餓死だったこと…。初めて聞く話でした。「戦争は絶対にダメだよ」と語るその人の声が心に残っていました。
「戦争になったら医師や看護師は真っ先に戦地に送られる。戦争に役立つために看護師になるわけじゃない」とマイさん。
■私たちが出した答え
はじめに、民医連新聞に載った元自衛隊員・井筒高雄さんのインタビュー(五月一八日付)を自治会で読み合わせました。コバヤシくんは、「戦争するには今の自衛隊員の数では足りない、の証言に、『徴兵制はない』という安倍首相の言葉が信用できなくなった」と言います。学校のある流山市の街頭でも自衛隊が若者を勧誘していると知り、ショックでした。
東葛病院の医局が出した「戦争法案反対」アピールを読み、新聞などで法案をすすめる自民党の言い分も学習。イラク戦争の際、日本から派遣された自衛隊員のうち、帰国後も含めると五四人も自殺していたことも知りました。
「僕ら憲法九条で守られていると思っていたけど、隠されていることがいっぱいあるんじゃないか。秘密保護法の強行採決から、一気に危機感が高まった」とコバヤシくん。「いま反対しないと戦争を拒否することが“罪”にされてしまう。僕は戦場に行く看護師にはなりたくない」。
ミキさんも、「いま、実習先で担当している八〇代の患者さんに願い事を聞いたら、『あなたたちを戦争に行かせたくない』と涙を流した。安倍首相の言葉より、涙を流して話してくれた患者さんの言葉を自分の答えにしたい」と言い切りました。
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若者憲法集会や国会前行動にも出向き、肌身で学んだ自治会メンバーが出した結論は―。
戦争立法は、他国の戦争に、いつでも、どこでも、どんな戦争でも「切れ目」なく「歯止め」なく自衛隊を参加させるためのもの。「憲法を無力化させる『戦争立法』には反対」の声をあげること。夏休み前に、全学生での決議採択をめざします。
(民医連新聞 第1600号 2015年7月20日)