相談室日誌 連載395 生保抑制は葬儀代にも 実態からアクションを(北海道)
ひとり暮らしで生活保護を利用していた七〇代の男性が、食道がんを患い、当院で亡くなりました。神奈川県に兄はいますが、金銭トラブルから疎遠になっていました。また近くにいる義理の息子は、失業中で無収入。疎遠だった兄は「お金のことで苦労させられたが、最後に会いたい」と、夫婦で駆けつけました。
生活保護には「葬祭扶助」があります(第一八条)、当院のある地域の基準(二級地)では、約二〇万円。ところが、葬祭扶助を支給する条件に「扶養する者がいる時には支給されない」との文言があり、福祉事務所は葬祭費を出さず、兄に支払いを求めました。兄は年金生活者で北海道に来る飛行機代を工面するのがやっと。葬祭費を捻出する余裕などありません。「またお金のことか」と落胆されました。
福祉事務所は、葬祭扶助の支給を「扶養義務者がいない場合」という要件に固執して決めています。「最期は一緒に過ごしたい」と親族が登場すると、たとえそれまでの関係が薄かった場合でも、今回のように葬祭費を出そうとしません。
結局、扶養義務者にあたらない義理の息子や民生委員が葬祭費の申請者になり、葬祭する扶養義務者がいないケースとして交渉し、葬祭費の申請にこぎつけました。
生活保護が申請された時、福祉事務所は、当事者の直系血族(親子)と兄弟姉妹に扶養が可能か否かについての扶養照会をします。これは、困窮した人が生活保護申請をためらう要因になり、生活保護の捕捉率(制度の利用資格のある者のうち、現に利用できている者が占める割合)は二割と諸外国に比べても非常に低い現状をつくっています。二〇一三年から生活扶助は段階的に減らされ、最大一〇%もの削減。さらに、暖房費にあてる「冬季加算」を減額することに。北海道では死活問題です。北海道民医連で毎年実施している冬季高齢者生活調査でも暖房費を節約する声が多く、室温調査では一五度以下の世帯も珍しくありません。このような実態をもとに健康で文化的な生活ができる社会を目指しアクションする必要があります。
(民医連新聞 第1599号 2015年7月6日)
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