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民医連新聞

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「改悪」現場から問う 「選定療養費」義務化 重い患者ほど影響 「紹介状なし」受診に負担課す

 社会保障改悪が、医療や介護の現場にどう影響するか。前回に続き「医療保険制度改革法案」。同法案には紹介状なしで大病院を受診した患者に、定額負担を義務付けることが入っています。

 医療保険制度改革法案について、患者さんから懸念が出るのがこの項目。検討されている負担額は五〇〇〇円~一万円。また「大病院」がどの規模を指すか「特定機能病院その他の病院」とする条文からは不明確です。社会保障審議会の議論では「DPC病院」や「二〇〇床以上」ものぼっています。負担額も病院の定義も「後に省令で出す」との扱いです。

意識して見えた問題

 「現行制度でも不便を感じている患者さんは沢山いるんです」と、北海道社保協の沢野天事務局長(北海道民医連事務局)。現行制度とは初診時選定療養費(保険外併用療養費)のこと。二〇〇床以上の病院を紹介状(診療情報提供書)なしで受診した患者に、病院が請求して良い、いわば「差額」です。料金は病院が設定します。
 道厚生局のHPから、初診時選定療養費を徴収する道内五四病院の料金を調べてみると、四〇〇円から上限いっぱいの六四八〇円まで。一〇〇〇~三〇〇〇円が最多ですが、窓口負担と合わせると、軽い負担ではありません。
 実際に北海道民医連でも、専門治療のために患者に大病院を紹介したが、本人が拒む事例が。患者には以前、紹介状なしで同じ病院に行き、料金を請求された経験があったのです。「今回は紹介状があるから」と職員が説明し、受診に付き添って事なきを得ました。「料金を請求され困った」「紹介状なしで診療を断られた」との声は他にも届いています。ちなみに、大学病院本院(八〇カ所)の約三割が初診時選定療養費を五〇〇〇円以上に設定しています(全国医学部長病院長会議調べ)。

効果不明「受診抑制」明確

 紹介状なし受診の定額負担義務化は、病院・診療所の外来機能分化や、患者の受診行動を変えることが狙いと説明されています。
 ところが、現行制度の検証も、提案された義務化で受診動向がどう変化するかの推計もありません。「患者の『交通整理』は本来、患者教育と周辺医療機関との連携関係の構築で行うべき」と指摘するのは神奈川県保険医協会。「紹介状の有無で制裁のような料金をとり、受診抑制に拍車をかけるのは健保法に反する」と反対しています。
 日本難病・疾病団体協議会(JPA・構成員総数二八万人)も法案を危惧する見解を発表。難病患者は確定診断や有効な治療を求め、多くの病院を受診します。その都度紹介状をもらいにかかりつけ医に行くのは難しい。定額負担義務化は患者・家族の経済的負担増やし、医療を受ける機会まで奪われかねない、との指摘です。
 国会では、自民党議員からも「フリーアクセスの制限では?」と質問が出ました。
 医療保険制度改革法案は五月二七日に参議院本会議で採決されました。十分な審議もなく、命にかかわる改悪の強行を許してはいけません。

(木下直子記者)

(民医連新聞 第1597号 2015年6月1日)