相談室日誌 連載393 DV被害者と行政の支援の姿勢(熊本)
Aさんは、結婚当初から夫にひどいDVを受け、女性センターへ一時保護された四〇代女性です。恐怖感から寝つきが悪く、過食・拒食を繰り返し、当院を受診。県営住宅で一人暮らしを始めると同時に生活保護の利用を始めました。保護課から障害年金の手続きをすすめられ、相談に来たのがAさんとの出会いでした。
生活と健康を守る会(生健会)から障害年金の遡及分は自立更生のために本人が使えると聞き、Aさんに伝えました。しかし保護課は「生活保護法が改正されて使えない」と対応。その後、障害厚生年金2級と遡及分が決まると保護課は「保護基準を上回るため保護廃止。遡及分を返還するように」と連絡してきました。
そこで、保護課、本人、生健会、PSWで話し合いの場を設定。保護課は「遡及分は使えないという通達がある」の一点張り。二度目の話し合いで、通達の「やむを得ない事情がある場合のみ使用できる」という文面を提示。必要物品の見積もりを出し、保護課が検討することになりました。話し合いの最後にAさんは「保護を受けられてありがたかったが、ていねいな説明がなく、残念。今後、他の人にはきちんと対応してほしい」と、涙ながらに訴えました。
Aさんは病状が思わしくない中、見積もりを取って提出。提出後は、保護課の返信を待って毎日団地の五階から一階のポストに確認に下りるのですが、一向に届きません。PSWが保護課に本人が心配していると伝えると「そう言われても内部で決済を回さないといけないから」という返事。結局、保護課が認めたのは、ガス台と電動自転車の購入だけで、他の物品を認めない理由の説明は一切ありませんでした。
現在、弁護士と相談し、不服審査請求中です。弁護士から生活歴を聞かれ、過去を思い出して震えるAさんを見て、Aさんの思いや病状を考えない対応や「できない」でやり過ごそうとした保護課にはいまも怒りを覚えます。
患者さんの立場で権利を擁護することはPSWの大きな役割です。声に出せない人もまだ多くいます。日々の関わりの中で、見落とさないよう役割を意識していきたいと思っています。
(民医連新聞 第1597号 2015年6月1日)
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