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民医連新聞

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「改悪」 現場から問う 後期高齢・保険料軽減廃止 低所得の高齢者に負担増 保険料10倍化のケースも

 安倍内閣の社会保障改悪の影響を考える連載二回目は、国会で審議中の「医療保険制度改革関連法案」に盛り込まれた、後期高齢者医療の保険料の特例軽減廃止についてです。(丸山聡子記者)

 「今でも医療や介護の保険料が払えない患者さんは多い。保険料軽減をやめたら大変なことになります」。東京・中野共立病院のSW・渋谷直道さんは懸念します。

865万人に影響

 七五歳以上が加入する後期高齢者医療制度では、低所得者の保険料を最大九割軽減する特例措置が行われています。これを段階的に廃止する方針が医療制度改革法案に入りました。対象は昨年度で八六五万人。加入者一五七四万人の過半数が影響を受けます。
 後期医療の保険料は、加入者全員が負担する部分と、年収によって負担額が決まる部分でなり立っています。低所得者には、負担部分が最大七割軽減されることになっていましたが、それでも負担が厳しく、制度導入時の〇八年度から負担を緩和する特例がしかれました。夫婦世帯で夫の年金収入が年間一六八万円以下の人などを対象に、年金が年八〇万円以下の約三一一万人を九割軽減、同八〇万円超~一六八万円以下の約二五八万人を八・五割軽減に。加えて後期高齢者になるまで、被扶養者だった人も九割軽減です。
 特例軽減が廃止されれば保険料は二倍、三倍に。被扶養の人では一〇倍になるケースも(資料)。

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いまでさえ困窮する後期高齢者

 政府は特例軽減廃止の理由として「特例として実施してから七年経つから」「国保の軽減割合最大七割と比べて不公平」などと説明しています。
 しかし、この七年間で年金は削減、消費税は増税され、物価も上昇するなど、高齢者の生活は厳しくなる一方です。制度発足時の保険料は月額五二八三円(平均)でしたが、二年ごとに見直され、昨年は月五六六八円に。その結果、保険料滞納者は約二五万人、ペナルティーとして二万三〇〇〇人に短期保険証が発行されています。
 渋谷さんも、保険料滞納が受診や治療を困難にしているケースを間近に見ています。
 月十数万円の年金収入のみで暮らすある夫婦は、夫が入院し、患者負担分(月四万四四〇〇円+給食費二万三四〇〇円=六万七八〇〇円)の支払いに困りました。そこで限度額認定制度を申請することにしましたが、保険料滞納があったことで「制度は使えない」と区役所から説明されました。
 分割納付を約束してなんとか認定され、入院費は月二万四〇〇〇円まで減額。しかし「完納しない限り認定しない」という対応を崩さない自治体も存在します。
 急性期病院から転院してきた別の患者さんは介護保険料を滞納したペナルティーで、介護サービス利用料が三割負担になっていました。紹介元から「支払いが困難で必要な介護が受けられない。一割負担で済む回復期リハで少しでも長く入院を」と要請されました。
 滞納へのペナルティーも以前より厳しくなっています。「さらに保険料を値上げすれば、高齢者はますます医療から遠ざけられてしまう」と渋谷さんは言います。

*   *

 そもそも特例軽減は後期高齢者医療制度が開始される時、「まるで姥(うば)捨て山だ」と世論の批判が高まり、設けられました。宮城県や愛知県の後期高齢者医療広域連合議会も「特例の継続」を求める意見書を採択。現場の声に背を向けた特例廃止は許されません。

(民医連新聞 第1596号 2015年5月18日)