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民医連新聞

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高浜原発3、4号機 「再稼動差し止め」希望ある決定 福井地方裁判所

 「関西電力は高浜発電所3号機及び4号機(福井県高浜町)の原子炉を運転してはならない」―。四月一四日、原子力発電所の再稼働差し止めを命じる仮処分を福井地方裁判所が出しました。福井や近畿などの住民九人の申請を認めた全国初の画期的な決定です。その決定では、福島での原発事故後に定めた原子力規制委員会の新規制基準にふれ、「基準に適合しても安全性は確保されない」と指摘もしています。当日のリポートが、福井民医連の佐々木紀明事務局長から届きました。

 【福井発】四月一四日午後、福井地裁正面に多くのメディアが陣取っていました。そして、二時の決定の瞬間を待つために、京都、滋賀、大阪、兵庫など関西をはじめ、全国からの支援者が続々と集まり、地裁前の歩道は人で埋め尽くされました。
 午後二時四分、地裁から駆け出してきた申立人と弁護団が「司法はやっぱり生きていた」「司法が再稼働を止める」の垂れ幕を掲げると、大きな歓声が上がりました。
  「仮処分」は法的手続きですが、当事者の権利を守るために、時間がかかる通常の訴訟ではなく、暫定的に行うもの。決定が出た段階で効力が生じます。関西電力はこの決定を不服とし、同地裁に異議と執行停止を申し立てる方針ですが、決定の取り消しや執行停止がない限り、再稼働はできません。

「新規制基準満たしても危険」

 処分を行った樋口英明裁判長は、昨年五月に「人格権が優位である」として大飯原発3、4号機の再稼働差し止めを認める地裁判決を出した裁判長です。
 今回の仮処分にあたっては、新基準に合格した高浜原発を「機は熟している」と、他とは切り離して決定を出す方針を示しました。私たちは良い結果が出ることを期待していましたが、期待以上の最高の決定でした。
 裁判長は決定の理由の中で、「新規制基準に求められるべき合理性とは、原発の設備が基準に適合すれば深刻な災害を引き起こすおそれが万が一にもないといえるような厳格な内容を備えていること。しかし新規制基準は緩やかにすぎ、これに適合していても本件原発の安全性は確保されていない」と新基準そのものを「合理性を欠いている」と指摘し、「住民らが人格権を侵害される具体的危険性が認められる」と結論づけました。今回の決定は高浜原発だけでなく、全国の原発の再稼働にも関わってゆくものです。

未来への最低限の義務

 同日午後三時から地裁近くの国際交流会館で報告集会と記者会見を行いました。三〇〇人が入る会場はすぐ満員になり、第二会場ができました。弁護団からの説明に続き、七人の申立人が思いを語りました。申立人の総数は九人、福井県の三人に加え関西地域の六人です。「司法が再稼働を止めてくれて感無量」「未来の子どもたちへの最低の義務」「五七七日間、日本中の原発が止まっている。永久に止めたい」「今回の決定が福島の人たちへの励ましになればと思う」など熱い思いが伝わるスピーチで感動しました。

原発ゼロへの転換の契機に

 福井民医連では毎月一一日の市民行進や毎週金曜の関電前(県庁前)行動への参加、福井県知事あての「再稼働を認めないで」県民署名などの運動にとりくんできました。署名は全国の民医連からの協力もあり、一万五〇〇〇筆超を集約。しかし、政府が再稼働推進の姿勢を変えないことや立地自治体の高浜町議会が再稼働容認決議をしたこと、県知事が二五万筆の署名の直接受け取りを拒否したことなどに希望を失いかけていました。
 そんな時に出た今回の決定で、光が見えました。今度こそ国と電力会社は司法の判断を厳粛に受け止め、原発再稼働を断念し、原発ゼロに舵を切るよう求め、運動を強めていきます。


川内原発の差し止めは却下(鹿児島地裁)

 四月二二日、九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働差し止めを求めた仮処分申請は、鹿児島地裁が却下しました。
 全日本民医連は即日、抗議声明を発表。原子力委員会の新規制基準で安全は確保されているとの見地での決定は、「原発周辺住民の人格権を重視した福井地裁の決定を否定し、原発再稼働を優先するもの」だと指摘。「断じて認められない」と抗議しました。
 なお現在、再稼働をねらい、新基準での審査が実施されているのは一五原発二四基。うち、新基準に「適合した」とされたのは高浜原発3、4号機と、川内原発1、2号機です。福井地裁での判決を力に、引き続き再稼働を許さない各地の運動は続きます。

(民医連新聞 第1595号 2015年5月4日)