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民医連新聞

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フォーカス 私たちの実践 ICUの面会時間制限廃止 東京・立川相互病院 「面会、24時間できます」  制限を廃止し得た効果は―

 東京・立川相互病院集中治療室(以下、ICU)では、二〇一〇年から制限を廃止し二四時間面会を可能にしました。ICUの面会時間制限は、危機的状態にある患者・家族のケアのため、緩和傾向にあると言われています。職員からアンケートをとり、課題を検証しました。看護師の北澤真衣子さんの報告です。

 同院は三五〇床、ICUは八床です。それまでは、面会は「午前七時半~八時半」「午後三時~四時」「午後七時~八時」の三つの時間帯に限定し、面会時間も「一五分間まで」に制限していました。
 面会時間を見直したきっかけは、制限のない病院(民医連加盟)で研修した看護師から「課題より効果が大きい」との報告があったためでした。スタッフ間で「うちでもやりたい」との声が高まり、面会は二四時間可能にし、時間制限も廃止しました。

患者のささえに

 面会時間の制限廃止について医療者が感じている効果・問題点を明らかにし、課題を検証しました。看護師、理学療法士、言語療法士、臨床工学技士の五六人にアンケートを行い、四二人(七五%)が回答しました。
 アンケートは、面会時間制限を廃止して良かった点と問題点を記載する形。さらに、面会時間制限の廃止を続けた方がいいか回答してもらいました。
 効果があったのは、「患者の心理・身体的ささえとなった」など五点でした()。
 面会時間の制限廃止で家族との面会時間が増え、患者が心理的なささえを得やすくなりました。アンケートでは「家族の前では積極的にリハビリをしていた」という回答が多くありました。闘病意欲を高め、身体的回復にもつながったと考えられます。
 「せん妄のある患者は、面会があると落ち着くので、ほかの患者のケアができる」という回答もありました。家族の面会は患者が日常性をとり戻すきっかけになり、せん妄の改善に効果があるとも言われています。また、その対応をする医療者の仕事量の軽減にもつながっています。
 次に、家族の生活が保障されました。家族の生活に合わせて面会できるようになったためです。仕事を持つ家族が、仕事帰りの午後八時過ぎに面会にくるケースも増えました。
 原因不明の状態悪化でICUに入院していた五〇代男性の妻は、「家に一人でいると不安でいてもたってもいられないので、ずっと付き添っていられると安心できます」と話していました。
 医療者のケアを見学したり、医療者とともにケアをする機会も増えました。「患者のそばにいたい」「患者のことを知りたい」「患者のために何かしてあげたい」という家族のニーズに応えやすくなりました。医療者のケアの様子を目にして「体位交換ひとつでも、管が体の下にいかないように気をつけたり、血圧の急激な変化がないかチェックしたり、ていねいにやってくれていることが分かった」と信頼を寄せてくれた家族もいました。家族の不安を減らし、医療者との信頼関係の構築・改善につながると考えられます。

安静の妨げになる危険も

 一方、課題も四点があがりました()。ICUは大部屋で、ベッドはカーテンで仕切られているだけです。面会が長時間だと、会話がほかの患者の安静を妨げかねません。声が大きい場合、こまめに声をかけることで、トラブルになることを防いでいます。
 また、ベッド周囲に多くの医療機器を設置するため、スペースも狭いのが現状です。家族控室は一室しかありません。医療機器に囲まれた病室は、強い緊張や圧迫感を与え、家族の疲れが増大することが考えられます。

表

カンファレンスで情報交換

 制限の廃止を継続するかどうかは、「する」が九五・二%、「しない」が四・八%と、継続への支持が圧倒的でした。患者や家族にとって効果が大きく、医療者と家族の信頼関係が深まったと感じています。
 一方で、複数の家族が入れ替わり立ち替わり面会に訪れ、スタッフに同じ質問を繰り返すなど、医療者の負担が増している側面もあります。自信を持ってケアできるように、病態、処置や家族看護、接遇などの学習会を重ねたり、ていねいなカンファレンスで医療者間の意思統一をはかるなど、改善をすすめています。

(民医連新聞 第1595号 2015年5月4日)