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民医連新聞

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安倍政権に立ち向かう渡辺名誉教授の講演から(下) 共同を広げる5つの可能性

 全日本民医連第二回評議員会で行われた渡辺治さん(一橋大名誉教授)の講演から。後半は安倍政権に立ち向かうための可能性と課題を考えます。(新井健治記者)

 安倍政権を倒すうえで、参考になるのが日本で唯一、国民的な共同の経験といえる一九六〇年の安保闘争です。五〇万人が国会を取り囲み、岸内閣を退陣に追い込みました。安保の教訓から学ぶとともに、安保にはなかった五つの新しい可能性が運動のカギを握ります。
 第一は地域を根城にした運動を構築できる可能性です。安保は都市部中心のたたかいでした。今は反TPPや脱原発でも地域の活動が盛んです。七五〇〇ある九条の会の六~七割は地域の会です。
 第二に、良心的な保守層を巻き込むことが可能な状況にあります。安倍政権は従来の自民党政治の外交戦略と地域戦略の原則を覆そうとしており、地域の保守層が自民党から離反し始めています。
 三番目は、安保の時とは比べものにならないくらい大きくなった市民運動との共同の可能性。四番目として、女性の力を活かすことです。安保は主に男性の労働者と学生が運動を担いました。
 五番目は中高年の力です。安保の中心にいたのは、二〇代の若者たちでした。九条の会の会員の中には、「こうした集会は初めて」という中高年が一割以上います。これまで運動の核となってきた人ががんばることで、新たに参加する中高年も生まれます。

迅速かつ広範な運動を

 五つの新しい可能性を現実にするために、五つの課題を挙げます。第一の課題は、鋭く迅速な運動と広範な運動の両方をすすめること。集団的自衛権をはじめ医療・介護や労働法制の改悪など、連日のように新たな課題が噴出しています。その都度、機敏に、それぞれの課題で運動する共同センターや労働組合、市民運動が必要です。一方、国民的共同をつくるには、九条の会のように動きは鈍いけれども広範な市民が参加する組織も必要です。
 二番目の課題は、国民的共同の中心となる革新共闘を育てることです。
 三番目は、良心的保守層を巻き込むこと。昨年一二月の総選挙で先駆的な事例がありました。小選挙区すべてで辺野古新基地反対派が勝った沖縄です。選挙結果を分析すると、革新票は増えておらず、革新と良心的保守による共同の勝利と言えます。共同は自然に生まれたわけではありません。良心的な保守に、革新側が働きかけたから成功したのです。
 それから四番目。これは民医連に期待していますが、暮らしと平和を守る運動を同時にすすめることです。原発やTPP、消費税で立ち上がる人々と手を組んで大きな共同をつくる。平和と民主主義と暮らし、これをどうやって一つの輪にしていくか。
 最後の課題は、対案を出すことです。今の憲法で日本を守ることができるのか、消費税を上げないで社会保障を充実できるのか。福祉国家型の対案を示しながら、運動を展開しましょう。
 五つの課題にとりくみ、安倍政権を私たちの力で倒す。安倍政権を倒すことができれば、第二、第三の安倍は出てこないと私は思っています。安倍首相は支配層の最後の切り札だからです。
 逆に、戦争立法を通してしまうと、明文改憲が必ず出てきます。改憲を阻止する運動は、実は保守的な現状維持のたたかいです。しかしこのたたかいに勝つことによって、憲法の生きる日本をつくる第一歩を踏みだすことができるのです。

(民医連新聞 第1594号 2015年4月20日)