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民医連新聞

民医連新聞

1票で守る平和といのち 地方から変えよう 政治の流れ

 四月一二日と二六日は、知事や市町村長、議員を選ぶ統一地方選挙の投票日です。戦争する国づくりや社会保障の大改悪など、国政の課題は山積み。地方選はいのちと暮らしを守る地域づくりをすすめるとともに、自治体を国の悪政から住民を守る防波堤に変えたり、国政に対して民意を示す機会です。全日本民医連は三月二〇日、統一地方選のアピールを発表。民医連新聞号外「選挙に行こう」を二〇万枚、全県に発送しています。“選挙に行こうキャンペーン”にとりくむ事業所も。岡山協立病院では、昨年の総選挙で連日、職場の仲間にビラを配りました。担当した職員たちに思いを聞きました。(新井健治記者)

「見て見ぬふりは未来壊す」
毎朝、投票呼びかけた
 岡山協立病院

 岡山協立病院の社保平和環境委員会では昨年一二月、総選挙の公示日から投票日までの九日間、毎朝、タイムカード前で職員にビラを配りました。内容も毎日変え、集団的自衛権、原発再稼働、沖縄米軍基地、消費税、社会保障で各党の政策を比較し、争点を浮かび上がらせました。
 「見て見ぬふりの私たちが、誰かの未来を壊している」など、キャッチフレーズも工夫。「若手職員へ問いかけるような紙面づくりを意識しました。『あの政党に入れておけばいいんでしょ』ではなく、事実に基づき、社会について考えるきっかけにしたかった」と委員の岩木勢司さん(SW)。
 委員長の栗林悟事務次長は「今の政治を許していたらとんでもないことになる、との危機感が行動のきっかけ。無関心やあきらめが一番いけない」と言います。
 後安元三さん(事務)は「自民党はアベノミクスの一点で、争点がうやむやになっていた。政策を学んで決めてほしかった」。ビラは朝礼や休憩時間の話題になるなど、院内の雰囲気を変えました。

投票率は75%超に

 一度も投票をしたことがない、という職員もいます。「投票日はイオン岡山に行きたい」→「期日前投票があります」など、投票の方法を解説したビラも作りました。大森俊明さん(二八、事務)は、入職前は選挙にあまり関心がありませんでした。「学校では地元で起きた朝日訴訟のことも教わらなかった。学ぶことで意識が変わります」と話します。
 選挙後は全職員にアンケート。投票率は七五・五%と全国平均(五二・六六%)を大きく上回りました。「一定程度、ビラの効果が出たと思います」と後安さん。岩木さんは「アンケートに二割が答えていない。この層には投票に行っていない人が多いのでは?」と分析します。
 年代別では二〇代が六一・九%、三〇代が七一・三%、職種別では看護や技術職が低い傾向に。看護師長の石邨(いしむら)由美子さんは「看護師は患者を通して社会の矛盾に気づいています。でも、夜勤で疲れていても投票に足を運ぶには、もうひと段階が必要かな」。

人権意識は自然に育たない

 委員会の行動力の背景には病院全体の活気があります。同院はここ数年、チームSTEPPSによる医療安全意識の向上や、QI大会の実施などにとりくみました。
 和田博知事務長は「全日本民医連が作ったビラを配って終わり、ではなく、自分たちの頭で考えて行動した。また『やりっ放し』ではなく、アンケートで結果を返したことも良かった」と言います。
 高橋淳院長は「社会に目を向けるには、患者から学ぶアンテナが大事。今の政治で“地域まるごと健康づくり”の理念を実現できるのか。日常の医療活動と選挙は別ではありません」と指摘します。
 「民医連の理念は意識的に追求しないと、おろそかになる危険性を常に秘めていると思います」と和田事務長。石邨さんは「人権意識は自然には育ちません。社会情勢について、職員同士でもっと会話をしたい」と意欲を見せます。
 岩木さんは言います。「統一地方選では、国政選挙との違いをアピールしたい。選挙の前には常にアクションを起こし、投票に行くことを当然の文化にしたい」。

「投票率と社会保障は正比例」
 本田宏医師

 なぜ、投票は大切なのでしょう。医療崩壊の問題を発信し、「選挙に行こう」と呼びかける医師の本田宏さん(医療制度研究会副理事長)に聞きました。

表 人口当たりの医師数が最も少ない埼玉県で二六年間、外科医を勤めました。疲弊する現場に身を置きながら、医師不足の原因を調べるうち「選挙に行かないと大変なことになる」と分かったのです。
 政治の本来の役割は、税金を使っていかに良い社会をつくるのか。しかし、現状は利益誘導に終始する政治家と、政治家の都合に合わせて政策をつくる官僚に牛耳られている。医療や介護の充実に使うべき税金が、軍事費や公共事業費に消えています。
 私がデモに参加したのは五〇歳過ぎ。それまでは「お上が悪いことをするはずがない」と信じていました。日本人は政治に無関心なうえ、七割以上が大手メディアの情報を鵜呑みにしています。これでは一部の政治家の思うまま。投票に行かないから政治が劣化し、そのことが医師不足を招いていることに気づいてほしいのです。
 世界を見ると、キューバやデンマークなど、社会保障が充実している国ほど投票率が高い(図)。国民の政治意識と社会保障は正比例の関係です。三月に民医連の皆さんとキューバを視察しました。米国の経済封鎖で貧しい国ですが、医療と教育は無料。生活に不安がないから、国民は明るい。「人のために働きたい」と語るキューバの医学生に魅了されました。
 私は日本の若者に社会の構図に気づいてほしいと、フェイスブックやツイッターで情報発信しています。政治意識の高い人たちのつながりを強め、連帯して社会を変えたい。社会にピュアな思いを持つ民医連職員の投票率は、八〇%を超えてほしいですね。

各地のとりくみ
統一選前にアンケート

 【宮崎発】宮崎民医連の平和社保委員会では、昨年一二月の総選挙で「選挙に行こう」ニュースを七回発行。全職員の投票率も調査しました(回答率七九・四%)。
 ニュースは消費税と原発再稼働で各党の政策を比較。投票の四日前には期日前投票の方法などについて解説しました。投票率は総選挙が七六%、同月の県知事選(二一日)が六七%。年代別では、二〇代が六四%、三〇代が六六%でした(総選挙)。
 隈本洋平さん(同委員会事務局長)は「若い世代の投票率が気になった。全国平均に比べれば高いものの、職員の四分の一は投票に行っていない。一〇〇%に近づけるとりくみを続けたい」と話します。県連は統一選に向けて事前アンケートを行い、関心の高い争点に絞りニュースを発行、選挙に行かない人を意識して呼びかけ文を工夫する予定です。

看護部でポスター作成

 【長野発】長野県民医連看護部会は、統一地方選に向け「アピールポスター作戦」を開始。事業所に送付したポスターを元に工夫したとりくみも。諏訪共立病院は「子どもや障害者の医療費窓口無料化」実現のため、外来で母親の声を集め、桜の花びらに一言を添えて掲示しました(写真)。人手不足で職場はどこも厳しいですが、声をあげなければ悪政の思うつぼです。(宗田まゆ美、中信勤労者医療協会、看護部長)

(民医連新聞 第1593号 2015年4月6日)