安倍政権に立ち向かう 渡辺名誉教授の講演から(上) 戦争する国づくりの新段階
一月に発足した第三次安倍政権は、新たな段階に入りました。今通常国会で、自衛隊が海外で武力行使ができるよう法整備をすすめ、来年七月の参院選後にはいよいよ憲法改正をもくろみます。この四月には統一地方選もあります。二月の全日本民医連第二回評議員会で行われた渡辺治さん(一橋大学名誉教授)の講演を二回に分けて紹介します。(新井健治記者)
安倍政権の“野望”
安倍政権は歴代の自民党政権で初めて、本格的に日本を軍事大国として復活させたい、との野望を持った内閣です。野望を実現するために、六大課題((1)戦争立法(2)辺野古新基地建設(3)原発再稼働(4)TPP(5)雇用・社会保障改悪(6)消費税一〇%)の達成をめざしています。いずれも実行すれば支持率が落ちる政策ばかり。化けの皮が剥がれる前に、六大課題で白紙委任を取り付けようと、昨年一二月の総選挙に踏み切ったのです。
総選挙の結果は、自民党の“圧勝”と共産党の躍進でした。自民はアベノミクス、共産は反構造改革と平和の政策を示し、それぞれ国民の支持を得たのが特徴です。
政党支持を端的に表す比例得票率を分析すると、自民は二〇〇一年を頂点に一貫して減少していましたが、一〇年の参院選で底を打ち、ここ数年は挽回しています。特に地方が強く、四七都道府県のうち三一県で平均得票率(三三・一一%)を上回りました。構造改革で痛めつけられた地方に、公共事業という“カンフル剤”を打ったことが圧勝につながりました。
逆に共産は都市部が強く、平均得票率(一一・三七%)を上回った地方は一一県にとどまりました。この一一・三七%は戦後三番目に高く、四〇議席を獲得した七二年の総選挙(一〇・八八%)をも上回っています。
戦争立法を通すのか
安倍政権は昨年七月、集団的自衛権の行使を閣議決定しました。しかし、閣議決定だけでは自衛隊は一歩も動けません。立法措置をとり、一〇数本の法改正を国会で承認する。いわば“戦争立法”が必要です。
戦争立法は、統一地方選後に国会に提出されるはずです。戦後初めて、自衛隊の海外での武力行使を可能とする戦争立法を通すのか。通常国会は、日本の最大の岐路になります。
安倍政権は、あらゆる場面で自衛隊の活動の自由を獲得したいと考えていました。しかし、一昨年の秘密保護法強行に国民の大きな反対運動が起こり、全面行使から限定行使に変更せざるを得ませんでした。それが閣議決定(別項)にある「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において」との条件です。
この条件は今後、戦争する国づくりを許さない運動をするうえで、大きく活かすことができます。
集団的自衛権行使を認めた閣議決定(抜粋)
我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。(2014年7月1日)
(民医連新聞 第1593号 2015年4月6日)