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民医連新聞

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リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(22)文・杉山貴士 それぞれの場で「出会い直し」と「協同」を<最終回>

 連載も最後となりました。目下、渋谷区などの「パートナーシップ証明」条例案の動きが話題です。2010年代に入って性的マイノリティをめぐる状況は激変しました。当事者の地方議員の誕生やパートナー条例案の論議など、1990年代には考えられなかったことです。
 しかしこの流れは、職場や地域から当事者が作り出したものというより、LGBTの経済効果を期待したものや、一部の当事者オピニオンリーダーが「人権」のみを旗印に先導したものであることが特徴です。「先駆的な政策」と「当事者たちの生活実態」に、まだまだ大きな乖離があります。
 何度も指摘しましたが、これらには「当事者の足場」が大きく影響しています。「生活問題」への解決のために動いたことがないから、空想的な問題提起になる。生活問題について発言する当事者はどこにいる? と、報道を見ていて考えてしまいます。
 私は、この時代だからこそ、性的マイノリティと多数派の異性愛者との「出会い直し」が必要だと考えています。職場や地域で「ともに働く」実践を通して、性的マイノリティの当事者の側もさりげなく自分を出していくことが必要でしょう。20年前では難しかったことですが、2015年のこの時代には可能なはずです。
 これまで私の昔話をはじめ、性は政治、貧困と性的マイノリティなどについて、お話ししてきました。要点は、性的マイノリティについて「知る」「かかわる」「ともに働く」ことを通じて「出会い直し」をすること、将来を展望して「協同」して生活を作りあっていくことです。また、社会に発信する当事者(私も含め)については、その足場(経済的社会的背景)が影響していることを意識したい。パートナーシップ条例案を出した渋谷区は、区内の公園からホームレス排除等も行っています。ホームレス排除もパートナーシップ条例案も同じ人が提起している点も、どういう意図なのか考えずにはいられません。
 パフォーマンスではなく、職場や地域で地味に「出会い直し」をしながら、「協同」して将来を展望する。こうした実践こそが必要だと感じています。「出会い直し」に向けて一歩、踏み出してみましょう。

すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

(民医連新聞 第1592号 2015年3月16日)