いのち守るたたかい地域から (7)子どもの医療費 岩手県 運動で窓口無料化を実現
統一地方選目前。各地の自治体運動を紹介します。今回は子どもの医療費の窓口無料化を実現した岩手県から。盛岡医療生協の伊藤勝太さん(事務)の報告です。
盛岡医療生協が事務局になり、県内一一九団体と一五〇人超の個人が参加する「子どもの医療費助成制度拡充を求める岩手の会」が昨年九月に発足、中学卒業までの窓口無料化を求めて運動しました。署名は五万筆を超え、県議会への請願は全会一致で可決。県知事が二月、二〇一六年八月から就学前までの窓口無料化(現物給付方式)への移行を表明しました。
東北6県でも遅れた岩手
岩手県の子ども医療費助成制度は、いったん医療機関の窓口で自己負担分を支払い、二~三カ月後に還付される償還払い方式でした。同方式は東北六県の中で岩手だけ。国に先駆けて乳児と高齢者の医療費無料化を実現した旧沢内村があるにも関わらず、全国的にも遅れた県になっていました。
償還払い方式は、アレルギー疾患やぜん息などで定期的に通院する子どもと親にとって大きな負担です。岩手の会のアンケートでは「地域によって医療費負担に格差があるのはおかしい」「子どもを病院に連れていきたくても、家計が追いつかない」など切実な声が寄せられました。一方で、七割の方が東北で岩手だけが遅れていることを知らない実態も明らかになりました。
開業医や保育園園長も
「会」は開業医や保育園園長、子育てサークル代表など、幅広い層を共同代表に据えました。若い世代にも受け入れられるよう、ゆるキャラやSNSを活用し情報発信。これまで「署名なんてしたことがない」という若い母親が活躍、一人で一〇〇〇筆以上集めた人も。署名は妻から夫、夫から職場へ広がり、みるみるうちに全県的な運動となりました。
署名と並行して県議会に請願しました。運動の成果か、こうした請願では珍しく全会派が賛同して紹介議員になり、可決しました。
県は「現物給付に移行すると、国からペナルティー(国保の国庫負担金減額)を課せられる」と償還払い方式を続けてきましたが、世論に押されて方針を変更。会ができて数カ月で県政を動かしたこと、要求を全県的な動きへと発展させた実績は、これからの運動の確信につながります。
しかし、課題も残ります。会が求める「中学校卒業までの完全無料化」は実現できていません。今回、通院は就学前までと従来通りにとどまりました。入院は小学校卒業まで延長することができましたが、依然として償還払いです。
また、一五〇〇円までは自己負担がかかることや、所得制限も従来通り。国のペナルティーが残る中での県の決定を評価しつつ、引き続き助成制度拡充に向けてとりくんでいきます。
(民医連新聞 第1592号 2015年3月16日)