相談室日誌 連載388 「初回面談」を大切に― 石田沙織(富山)
インターネットで無料低額診療事業をしている当院を見つけ相談に来られた四〇代の男性がいました。一週間前から腹部の痛みと膨満感がありましたが、無保険だったため、受診できず、痛みや不安に耐えて過ごしていました。
妻とインターネット関連の起業をし、生計を立てていましたが、数年前に妻が他界、仕事も手につかなくなり廃業。しばらくは貯金を切り崩して生活していましたが、すぐに底をつき、ハローワークに出向いたものの仕事は見つかりませんでした。
藁にもすがる思いで行った生活保護課では「まだ若いし、働いて」と言われ、自分の思いを十分伝えられず、結局、申請もできませんでした。借金だけはしないと固く決意していましたが、やむを得ず、その日初めてカードローンに手を出してしまったそうです。
事情を聞いた後、すぐ診察を受けるよう話すと「お金のことがはっきりしないから不安だ」と言いました。無収入で仕事もないため、再度生活保護の申請を急ぎすすめることを提案しました。しかし本人は、断られた経験から申請には強い拒否感を持っておられました。
無料低額診療事業をていねいに説明し、ようやく本人は診察に同意。結果、虫垂炎の疑いと糖尿病(過去に指摘されていたが放置)と診断され、専門治療のために、A病院へ紹介することに。A病院の地域連携室に生活状況を伝え、支援を依頼しました。病状が明確になった安堵からか、本人は生活保護申請を決意されました。治療後、体調が安定すれば働こうという意欲も持ち始めておられます。
今回のケースのように、若くて働ける患者さんだからこそ、早い段階で生活保護制度を利用し、就労支援を受けて生活をより早く立て直すことができるのだと思います。
このケースを通して、初回面談の重要性を感じました。情報収集、問題整理、必要な情報の提供、関係機関へつなぐこと―。相談に来られた時、たとえすぐに答えが見つけられなくても、共に課題に向き合い、解決に向け歩みをすすめたいと思いました。
(民医連新聞 第1592号 2015年3月16日)
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