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民医連新聞

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リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(21) 文・杉山貴士 超高齢社会と性的マイノリティ

 今の日本は「超高齢社会」です。2025年には団塊の世代が75歳。医療・介護体制をどう構築するか、大きな課題です。性的マイノリティも同じ日本社会に生きており、困難な状況はあるものの、職場や地域での出会い直しでクリアできる課題も多いのです。「どう歳を取るか」は性的マイノリティも異性愛者も同じく大きな課題です。
 私も40歳。老後を考えるようになりました。今の生活をどう維持するか。私の場合、相方くんとの関係性が婚姻制度で守られないので、その手当てが必要です。さらに「親の介護問題」。定年退職後の収入シミュレーション、病気等への備えとパートナーの医療意思表示書の準備、どちらか先に死んだ時の残された者への遺贈、考えるときりがありません。
 連載(12)(2014年10月6日付)で、普通養子縁組、公正証書等を残す等の対応について触れました。どちらにしても、当事者が自分で判断して実行するのはハードルが高い。同じような仲間はどう考えているのか、できれば「わかる相手」に相談したいものです。例えば、東京にあるNPO法人パープルハンズ(http://purple-hands.net/)では、性的マイノリティの老後について当事者や当事者の専門家といっしょに必要な手立てを具体的に学んでいます。『にじ色ライフプランニング入門』の著者で行政書士の永易至文(ながやすしぶん)さんは「ゲイ1期生」を自認する当事者。ロールモデルがない中で、制度を使っていかにゲイの老後をつくるか、各種メディアで発言しています(※)。生活者としてのあり方をサポートできる知識と当事者たちの生活実践を結ぶことが必要です。
 「メゾン・ド・ヒミコ」という映画で「性的マイノリティの老後」が描かれましたが、現実社会でのロールモデルは少なく、私たち当事者が老後の生活を作り合うしかありません。自分らしい生活を「ファンタジーで語る」のではなく、実践的に作り出す。それには法制度での対応や運動、そして勇気も必要です。私の場合、今の法制度を最大限活用し、養子縁組制度を使うかどうか、相方くんと思案中です。私の苗字が変わることになるので、職場等で「ゲイがいる」と見える化するのですが…。

※「性的マイノリティの老後 同居人の権利、書類に」(2014年11月6日、読売新聞 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=107825

すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか

(民医連新聞 第1591号 2015年3月2日)