変革と創造~口から守るいのち~ 歯科学術・運動交流集会in福岡 252人が参加、「貧困」から医科歯科連携まで交流深める
一月三一日~二月一日、全日本民医連は第二一回歯科学術・運動交流集会を福岡市内で開き、二五二人が参加しました。テーマは「変革と創造~口から守るいのち」です。(田口大喜記者)
まずは園田聡実行委員長(福岡・大手町病院付属歯科診療所所長)が開会あいさつをしました。
全日本民医連歯科部長の江原雅博歯科医師は原発推進、戦争する国づくり、社会保障解体、消費税増税を民意に背いてすすめる安倍内閣は国民に不利益しかもたらさない、と指摘。これまで以上に幅広い運動と手を繋ぎ、暴走をストップさせようと語り、「仲間と交流し学び合うことができるのは民医連の大きな特徴。成果を持ち帰って」と呼びかけました。
福岡・佐賀民医連会長の橋口俊則さんが現地歓迎あいさつ。
長瀬副会長の記念講演
全日本民医連副会長の長瀬文雄さんが「きらっと輝く民医連歯科を~いのちの平等めざして~」をテーマに記念講演。二〇年の節目をむかえた阪神・淡路大震災にふれ、当時の民医連の支援を振り返りました。「全国から一万三〇〇〇人の民医連の仲間が支援に集結しました。組織の本質や力は急場で試される。普段の理念、活動が生きていた」と語りました。
長瀬さんは「民医連とは何か?」を八五年前から振り返りました。民医連のルーツにもなった三島無産者診療所(大阪府吹田市)を紹介。公的健康保険も無い時代に「命が大切」と一九三一年に設立され、「命の平等、人権、戦争反対」を訴えたため政府の弾圧を受け、七年で閉鎖を余儀なくされました。その後間もなく、日本は全面的な戦争へ突入しました。
続いて、戦争する国づくり、社会保障解体、東日本大震災・福島原発事故被害への対応など、暴走する安倍政権を批判。貧困のため歯の治療ができなかった患者の事例をあげながら「いのちと人権が輝く平和な日本は可能。運動を広めていきたい」と語りました。
民医連歯科への期待として(1)人権を守る歯科医療の創造、(2)貧困と格差に立ち向かう、(3)地域包括ケア時代への創造的実践を、(4)次世代の担い手づくり、をあげ、「無差別・平等の医療と福祉の実現を」と呼びかけました。
分科会90演題
一日目後半は分科会。「医科・歯科・介護連携」、「安心安全のとりくみ」、「医療技術の向上」など多様なテーマの歯科実践全九〇演題が報告されました。歯周病治療の症例報告では治療前と後の口腔内写真を見せながら説明。山梨・武川歯科診療所では、治療後、口腔ケア意識を高めた患者に喫煙の歯周病リスクを説明したところ、禁煙にもつながりました。
岡山協立病院歯科は「夏休み病院探検隊」と銘打ち小学生向けの歯科体験を実施。病院探索、顎模型を使っての歯石除去・バキューム体験、印象材を使った指模型作りを実施。指模型作りは、子どもたちから歓声があがるほど好評でした。歯科全体の未来を意識したとりくみです。
ポスター、ミニシンポ
ポスターセッションは、下顎骨骨折に対する観血的手術、インプラント症例などから、無料低額診療事業まで三〇演題。
注目を浴びたのは東京・大田歯科の吉田心一歯科医師の報告。嚥下内視鏡検査を在宅医療に導入、介護する家族に嚥下状態を見せて、適切な食事が選択できるようにしています。経費や手法などたくさんの質問が。「原疾患を診る医師ができれば理想的。しかし医師不足の中、歯科医師が担えることもある」とまとめました。
また、入院、在宅、施設などで医科・歯科・介護の連携が広がる中、「口腔ケア」をテーマにミニシンポジウムを開催。医師、看護師、歯科衛生士、言語聴覚士が課題を討論しました。他に、感染対策など二テーマでテーブルクリニックを行いました。
良い刺激、現場でも
北海道・きたく歯科診療所歯科衛生士の前山香奈さんは「各発表の方向性がしっかりしていて勉強になりました。全国から集まることで民医連であることの自信にもなりました」。自身も演題発表した前山さんは「良い刺激になり、普段から症例を意識して業務にあたりたい」と語りました。
東京・小豆沢歯科、歯科医師二年目の加藤千晃さんは、「長瀬さんの記念講演で、民医連の良さを改めて実感しました。分科会では参考にしたい報告が多数。生かしたいです」と話していました。
(民医連新聞 第1590号 2015年2月16日)