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民医連新聞

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青ひげ先生の聴診器 秋田雨雀 土方与志 記念 青年劇場 医療現場にエールを送りたい

 青年劇場による演劇「青ひげ先生の聴診器」(高橋正圀・作、松波喬介・演出)が二月五日から上演開始です。医療現場の苦労やドラマを生き生きと描いた本作は民医連がモデル。そのストーリーに胸が熱くなります。稽古場を取材しました。(田口大喜記者)

 「青ひげ先生」とは、物語の舞台・花里病院の院長です。ひげの剃り跡が青々と濃いためについたあだ名です。午前の外来が済むと、午後は患者の訪問診療に地域を駆け巡り、市民祭りのため、病院ぐるみで劇団を立ち上げ、寸暇を惜しんで練習にはげみます。そんな人柄を慕って、青ひげ先生の周りにはさまざまな人物が登場します。認知症のお婆さん、医療ミスで訴えられた天才外科医など…。それぞれの人生に寄り添い、なんとかしようと知恵を寄せ合う病院スタッフの物語です。

公演中止から四年

 作品は、四年前に一度上演されています。しかし、公演期間中に発生した東日本大震災で中止を決断せざるをえませんでした。
 「一生懸命準備した舞台。悔しくて仕方なかった」と製作の大屋寿朗さん(56)は振り返ります。「いつか必ず!」と今年、満を持してのリメイク再演です。震災後の新しいエピソードを入れるため、劇団は福島県民医連のわたり病院を取材。登場人物に震災や原発事故に苦しむ被災者を加えました。

稽古場へ

 一月一六日、東京・新宿にある四〇坪ほどの稽古場に一七人の出演者が集まってきました。午前一一時から午後五時までみっちり稽古を行います。この日の指揮をとっていた板倉哲さん(5六=俳優・演出助手)を中心に、問題があればそのつど話し合い、解決していきます。身振り手振りや声の出し方、小道具の向きや置き方など、こと細かに決めていきます。台本に書かれている台詞や所作はほんの一部、それ以外の台詞や動作の多さに驚きました。
 俳優さんたちは四年前の記憶をたぐって「ここはこうだった」「こんな感じだった」と真剣。使い慣れない医療用語の入った会話は覚えにくいのか、かなり苦労されていた様子。しかし慌てることなく反復練習し、着実に自分の言葉にしていました。
 福岡・千鳥橋病院の山本一視副院長(全日本民医連理事)も稽古場を訪れていました。山本医師はこの作品の医事考証(医学面から見た脚本の検証)を担当しています。点滴注射の手順などもレクチャーしていました。

出演者からひとこと

 認知症の患者役の小竹伊津子さん(84)は役者歴六〇年の大ベテランです。かかりつけ医からも、役者を続けていることに驚かれるのだそう。「認知症の役は会話に脈絡が無いところが難しいです。私たちのお芝居で、大変な医療現場の人たちが元気になってくれればと」。
 主役、青ひげは葛西和雄さん(60)が演じます。「いま、医療現場の大変さは患者側からもわかります。なんのために医療をやっているのか、しっかりしているのが民医連です。作品を通して民医連のみなさんにエールを送りたいです」。
 命と向き合う医者はそう簡単には演じられない。極限まで医者になりきって本番に臨むと意気込みつつ「私自身、ひげは青くないんです」と気さくな笑顔をみせてくれました。

(民医連新聞 第1589号 2015年2月2日)