リアル社会を生きるゲイ職員の性講座(18) 文・杉山貴士 性的マイノリティ支援をめぐって〈1〉
今年は戦後70年の節目の年。今こそ憲法をくらしに活かす運動をすすめたいものです。
前回、総選挙を巡ってゲイと政治について話しました。ポイントは、「政治はどこを軸足にしているのか」ということだと思います。今回は性的マイノリティ支援に向けた考え方や方法について考えます。
連載16回(12月1日付)で、「“貧困とセクシュアリティ”を考えると、最初に民医連の診療所や病院と接点を持つ可能性が高い」と指摘しました。必要 なのは「セクシュアリティへの確かな知識」と、民医連の医療・福祉の考え方と実践です。性的マイノリティ支援というと、特別なことをしなければいけないの では、と考えがちですが、必要なのは「民医連での実践」「+αとしてセクシュアリティへの確かな知識」であって、それ以上はないと思います。知識は「知れ ばいい」ものではなく、“実感”することが大切だと思います。
セクシュアリティを日常的なものとして捉え直してみましょう。例えば、職場の就業規則にある「結婚休暇」をみると、異性愛に基づく異性婚を制度化したも のだと気付きます。性のありようは制度化され、私たちはその中で日常生活を送っています。性的マイノリティの人たちの戸惑いを想像したことがある人は少な いのではないでしょうか。多数派による制度が、同じ職場にいるであろう性的マイノリティの不利益、不平等ともなっているのです。
私は「人権」という言葉だけで性的マイノリティを考えることに限界も感じています。職場で同じ目標に向かって役割分担し合う仲間同士など、日常の経験を 通してこそ、性的マイノリティの問題が実感できるのではないかと思います。ともに働く仲間として日常を共有することで、仲間の置かれる不利益な状況も容易 に想像できるようになります。あなたの同僚が性的マイノリティなら、ここではどんな不都合が生まれるのか、そういう想像は、「働く仲間」としての実践を通 して得られる視点ではないでしょうか。制度がいかに異性愛に基づいて成り立っているのか、身近なものから見てみるといいかもしれません。
次回も、性的マイノリティ支援についてさらに深めます。
すぎやま・たかし 尼崎医療生活協同組合理事会事務局課長、法人無料低額診療事業事務局担当、社会福祉士。著書に『自分をさがそ。多様なセクシュアリティを生きる』新日本出版社、『「性の学び」と活かし方』日本機関紙出版センターほか
(民医連新聞 第1588号 2015年1月19日)