いのち守るたたかい地域から (4)国保の運用を改善 愛知県名古屋市
“病気の人に保険証を”
各地の自治体運動、今回は名古屋市で国民健康保険の運用を改善させた経験を紹介します。
資格書発行1000倍
名古屋市では、二〇〇四年に一桁だった資格証明書(資格書※)の発行が一四年春には四五〇 六件と、一〇年間で一〇〇〇倍という事態に。高くて払えない国保料の引き下げと減免制度の拡充など、制度の改善運動とともに、事業所の窓口での受療権を守 るたたかいがいっそう重要になっています。
現場からの発信が国会で
「資格書の患者さんが受診して、役所に短期保険証(短期証※)に切り替えるよう連絡しても、なかなか応じてもらえない」というケースが、民医連のSWから出されました。
二〇一三年一一月、愛知県社保協(社会保障推進協議会)が名古屋市と懇談し、この問題を指摘すると、「資格書を短期証に切り替えるのは『三カ月程度の就 労不能』の場合を基準にしている」という回答が。これは「病気の場合は短期保険証の交付を優先する」という厚生労働省通達に反する内容です。
県社保協では翌月以降も「名古屋市国保をよくする会」とともに、改善要請を続けました。そして、一四年四月に国会で田村智子参院議員(共産党)がこの問 題についてとりあげ、厚労省保険局長から「まず短期証を交付して、医療の確保に務める」との答弁を引き出しました。
運用改善を約束
五月、県社保協は保険局長の答弁を踏まえた要請書を市に提出。七月の懇談で市側は改善を確約し、次のように回答しました。
▽緊急に医療が必要な場合、日常生活に重大な支障を生ずる等の場合、本人、家族、病院のSWからの申し出により短期証を交付する▽医療を受けた日が閉庁 している場合はその日に遡って短期証を交付する▽SWが医療の必要性をコメントした場合は、無条件に短期保険証を交付する。
実は名古屋市では厚労省の事務連絡を受け、二〇一四年春に医療の必要な人に短期証を交付するよう連絡していたものの、それがその後も区の窓口職員に徹底 されていなかったことも判明。職員への徹底とともに、医療機関や当事者への周知も要望しました。
「治療継続、困っていた」
名古屋市が対応を改善する前は、滞納した保険料の半額を一括納付するか、二年で完済できる分納計画に基づき六カ月納付した後でなければ短期証は交付しない、という状況でした。「三カ月以上就労できない病状」の人への交付は、特例的なものでした。
この問題にかかわった協立総合病院のSW・中山志野さんは「短期入院のケースは適用になりませんし、他の事業所も『外来で治療を続けなければいけない患 者さんをどう救えばいいか』と、困っていました」と振り返ります。
「民医連職員からの発信を契機に、受療権を守った経験として、確信にしたい」と、県連の久保田武事務局長は語っています。
資格証明書…保険料を滞納した加入者への制裁で発行。受診すると、窓口でいったん一〇割負担し、後日、七割分が還付されるしくみ。還付分は滞納分にあてられることも多い。患者にとっては無保険に等しい
短期保険証…正規より有効期限が短い保険証。滞納者の制裁の一つ。
(民医連新聞 第1588号 2015年1月19日)
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