農作業で仲間づくり 笑って暮らせる地域を 長崎・させぼ健康友の会 里山クラブ
九州本島最西端に位置する長崎県佐世保市は海と山に恵まれた人口26万人の基地の町です。させぼ健康友の会では、豊富な自然を活かして農作業を行っています。どうして友の会が農作業を? 取材しました。(田口大喜記者)
里山の緑に囲まれて
取材日の一一月二四日、五〇~七〇代の一五人が畑に集まりました。「里山クラブ・百笑の家」の皆さんです。天気にも恵まれた絶好の畑作日和。
一〇〇〇坪あるという土地は日当たりも風通しも良く、作物もよく育ちそうです。道はかなりな急斜面。少し歩いただけでヘトヘトになった記者を尻目に参加 者たちはどんどんあがっていきます。この畑作業のおかげで足腰が鍛えられたのだそう。
この日の作業はタマネギ植えでした。連携して手際よく作業がすすみますが、大半が農業は未経験。他の農家の見よう見まねで技術を習得したそうです。育て ている作物はタマネギ、ダイコン、ブロッコリー、ニンジン、ソバなどさまざまです。この日はダイコン、カブ、サトイモを収穫しました。手塩にかけた野菜を 手に、みんな嬉しそうです。完全無農薬のため、虫に喰われたものもありますが「おいしくなければ虫も喰わないよ」とメンバーの宮崎康夫さん。
「里山クラブ・百笑の家」
「佐世保市になかった民医連の診療所をつくりたい」と、させぼ健康友の会は二〇〇八年八月に発足しました。現在は九四七人が加入しています。しかし、診療所計画は医師確保の困難で足踏み中です。
「それなら病気にならないためのとりくみが友の会でできないか? と考えました」と、友の会事務局長の北原辰己さんは語ります。それ以降、ウオーキングや健康教室などにとりくんできました。
そんな時、耕作をやめてしまった農地を無償で借りられることに。「里山の自然に触れ、土に親しみ、緑を介した健康・生きがい・仲間づくりを図る」目的と 「楽しみながらやる」をテーマに二〇一四年二月、「里山クラブ・百笑の家」をサークルとして立ち上げました。毎週月曜、畑近くに立つ小屋「百笑の家」に集 まります。会費は月一〇〇〇円です。
みんなでお食事
正午、いよいよ収穫祭です。かまどに薪をくべ、鍋をかけます。畑の野菜をふんだんに使い、 採れたばかりのサトイモを煮込んだ東北名物「芋煮」がメーンディッシュです。「うまか!」「いい味出とうね!」と舌鼓。他にもおはぎやサラダ、なますなど 持ち寄った料理もたくさん。ワイワイと収穫の喜びを分かち合いました。
「すっかり土いじりが趣味になりました。作業の後、みんなでご飯を食べるのも楽しみ」と語る山口トシ子さん。「運動にも勉強にもなります。採りたての野 菜を食べることが何よりの喜びです」と野口治信さん。他のメンバーに誘われて来たが、今では生きがいになったという人もいました。
「足腰が鍛えられ、食事も野菜中心になりました。土から活力を得て、山の緑を使ったリハビリテーションです」と友の会事務局次長の奈木義昌さん。仕事の ストレスで体調を崩し退職していた人が、里山クラブに参加したことで改善、社会復帰を果たした事例もあります。
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「民医連の診療所が欲しい!」というのはいまも変わらない願いです。「笑って死ねる病院」 で有名な石川県の金沢北健康友の会まで見学に行き、居場所づくりや仲間のあたたかさに刺激も受けました。「“笑って死ねる病院”はまだないですが“笑って 暮らせる地域”づくりをめざす」ことを目標に、畑づくりのほかにレストラン跡のいこいの家を使って、サロンや趣味の会も行っています。畑で採れた作物の提 供もめざしています。
(民医連新聞 第1587号 2015年1月5日)