談室日誌 連載382 若年の利用者と介護保険サービス 岡野恵美(広島)
早老症の中山さん(仮名/女性)は、五〇代。皮膚潰瘍の治療で秋から当院に入院しています。病気は四年前に大学病院で診断されました。身体障害者手帳3 級を取り、介護度は要介護3で、入院前はデイケア、訪問看護・介護と自費のヘルパーを利用しながら、夫と二人の息子さんとで暮らしていました。
ある日、中山さんから「自宅生活に限界を感じるようになった。できる限り我が家にいたいが、今のうちに自宅に代わるところをみつけておきたい」と相談が ありました。入院前の中山さんは両下肢と両肘の皮膚潰瘍が進行し、処置が毎日必要でした。また潰瘍の痛みもひどく、疼痛コントロールを目的に、他院の麻酔 科から麻薬も処方されていました。
移乗は見守りで可能、立位はPバー(スイングアームバー)保持で一分が限界。食事は痛みに耐えつつ取れていますが、いずれ困難になる可能性が。病状が進 行し体力が低下したことも自覚しておられ、家族が仕事に出ている日中、非常に心細いのだと分かりました。一番近くでみているご家族も「独りの時に倒れてい ないか心配だ」と切実に語りました。
ただでさえ欠陥だらけの介護保険は、五〇代と若い中山さんをささえるには不十分です。妻・母として家事を担いたいというニーズも強くありますが、現行制 度ではヘルパーがそれにはこたえられません。中山さんの複雑な思いと、制度の問題を痛感しました。
相談を受けて第二の療養先を検討するにあたり、療養病床や介護施設、障害者施設などに打診しました。しかし人手が足りない、麻薬での疼痛コントロールの 前例がないなどの理由で「対応できない」と言われ、現時点では有料老人ホームの紹介に留まっています。ところが有料老人ホームは、月額約二〇万円の負担が あり、患者と家族が負担し続けなければなりません。
医療や介護保険制度の見直しがすすむ中、中山さんのように先々に不安を抱いている人は少なくないはずです。本人が望む医療や介護を受けることができない現状に、SW自身がやるせなさを感じています。
(民医連新聞 第1584号 2014年11月17日)
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