相談室日誌 連載381 生活保護課の対応に“あるべき姿”考えた 中澤淳也(青森)
Aさんは脳梗塞で当院救急に搬送された七〇代男性です。事前情報では内縁の妻はいたが、重度の認知症で息子が引き取って以後、ひとり暮らしだと聞きました。また失語があり、YES・NOしか表出できませんでした。
支援方針に悩みましたが、Aさんが保険証や通帳、印鑑、手帳などを持参していたので、経済状況や知人の連絡先などは把握できました。体調が悪く、本人も入院を覚悟して準備されていたようです。
所持金は、現金一万円と残金六万円の通帳。しかし、年金を担保にした借り入れの返済中だと分かりました。年金額から、医療費と返済、家賃等を引くと、到底やりくりはできません。
Aさんに了解をとり、生活保護窓口に事情を話すと、Aさんは七年前まで生活保護を受けていたと分かりました。その時も年金を担保にした借金があり、返済終了を機に本人の希望で生活保護を打ち切っていました。
受給中のAさんはコミュニケーションも良好ではなく、担当者に良い印象を与えていなかったようでした。さらに今回の借金は二度目でもあり、生活保護の受 給は難航するのではないか…と、懸念せざるをえない状況でした。ところが、保護課の答えは「今ある書類で申請を受理する。すぐ来てほしい」というものでし た。
窓口はその日のうちに申請を受理しました。またその数日後には大家立ち会いの下、Aさん宅で借り入れ書類を確認しました。県外にいた家族への連絡も保護課が行い、家族も駆けつけました。
そして、「これからも病院と福祉事務所で連絡を密にし、協力していきましょう」と担当ワーカー。印象的な言葉でした。申請から一四日後に受給が決定しました。
様々な理由をつけて生活保護の締め付けが強化されている中で、過去や背景に捉われず、今まさに保護を必要としている方を適正に評価し、援助できるケース ワーカーがいること。それが本来当たり前なのですが、うれしく感じてしまうのは、今の生活保護制度や福祉事務所の姿勢に問題があるからだと思います。
(民医連新聞 第1583号 2014年11月3日)
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