だから安保はいらない (13)終了定めた第10条 「いつでもなくせる条約」
日米安保条約第一〇条では、この条約が一〇年間効力を存続した後はどちらの国も条約の終了を通告でき、通告が行われれば条約は一年で終了するとされています。
この規定はなぜ置かれたのでしょうか。連載二回目で見たように、一九六〇年の条約改定に際して、多くの国民が「戦争に巻き込まれる」という不安を持って おり、日本政府としては「一〇年たったらいつでもなくせる」という条項を置かざるを得なかったのです。
七〇年六月二三日は、条約の固定期限終了の日でした。この日に向けて「日本政府は条約の廃棄通告を」という運動が高まりました。その後、安保条約は「い つでもなくせる条約」となっているのですが、政府の「日米同盟重視」という宣伝で、国民がそのことを十分意識できない状態にあります。
世界には、米軍基地を撤去したり条約を終了した例はたくさんあります。フィリピンでは、八六年の革命で生まれたアキノ政権下、米国との基地協定が期限切 れを迎えました。九一年にフィリピン上院は基地の協定案を否決、翌年までにクラーク空軍基地やスービック海軍基地を含む全ての米軍基地を撤去。その後、米 国との間で派遣部隊協定などが結ばれていますが、米軍基地はありません。
ニュージーランドでは労働党政権が誕生した翌年の八五年、核兵器搭載の有無を明示しない米艦船の寄港を拒否しました。米国は政策としてその姿勢をとって いるので、米艦船や航空機は寄港できなくなりました。米国は八六年にアンザス条約停止の措置をとり、条約は事実上機能停止しました。
中米のエクアドルでは、九九年から米軍がマンタ基地を使用していましたが、二〇〇六年に基地撤去を掲げたコレア大統領が就任し、〇八年には国民投票で外 国軍基地を禁止する憲法を承認。〇九年には米軍基地を撤去させています。
そのほか、パナマ、タイ、アイスランド、スペインなどで米軍基地の撤去や閉鎖を実現しています。一九四七年時点で米軍基地があったが、九〇年までになく した国や地域は六一に及んでいます(林博史著『米軍基地の歴史』より)。韓国やドイツでは、近年米軍基地が縮小され、駐留兵員も大きく減少しています。
二〇一二年一一月一六日、米兵による集団女性暴行事件が起きたことを受けた沖縄県議会は、次の文言を含んだ決議を上げました。「県民の声を無視し、オス プレイが強行配備される中で、またしてもこのような事件が起きたことは、県民の我慢の限界をはるかに越え、県民からは米軍基地の全面撤去を求める声も出て いる」。
在日米軍基地の七四%が集中している沖縄県が「全基地撤去」に向かえば日米安保条約は機能しなくなります。沖縄では七割以上が安保条約の変更を求めてい ます。沖縄の基地をめぐるたたかいは、日米安保に直結しています。民医連の若い職員のみなさんが、辺野古支援・連帯行動などを通じて、基地や安保の問題を さらに深く学んでいくことを期待します。
(安保破棄中央実行委員会)
(連載おわり)