相談室日誌 連載379 健康保険制度に命を奪わせないために 川合優(石川)
救急外来の看護師から「保険証がなく受診をがまんしていた患者さん(Aさん、五〇代男性)が、これから虫垂炎の緊急手術になる」と、相談室に連絡が入りました。Aさんは受診日に発行された国民健康保険の短期保険証を持参していました。
Aさんは二つのアルバイトを掛け持ちして生活をしていました。しかし収入は少なく、国保料を支払う余裕はなく、資格証明書になっていました。仕事中に激 しい腹痛に襲われましたが、保険証もお金もなく、給料が振り込まれる日まで市販薬を飲んで四日間がまんしました。そして給料日、痛みに耐えながら、なんと か市役所に辿りつき「受診したいので保険証が欲しい」と相談しました。ところが窓口は「滞納保険料の一割(二万円)を払わないと保険証は渡せない」という 対応。少ない給料から二万円支払い、さらに「今後、毎月一万円ずつ保険料を支払う」という誓約書を書かされ、ようやくAさんは保険証を手にすることができ ました。その足で城北病院を受診し、緊急手術となったのでした。穿孔性の虫垂炎で一歩遅ければ死に至っていてもおかしくありませんでした。痛みをこらえな がらAさんは「保険料を滞納した私が悪い」と、自身を責めていました。
命を守るための国民健康保険制度のはずが、自治体の対応によって命が奪われるという悲惨なケースが後を絶ちません。このようなケースが繰り返されぬよう に、相談室では三年前から様々な民主団体と協力して、金沢市との交渉など国保行政改善に向けたとりくみを続けてきました。今回の事例が発生した直後にも金 沢市との交渉をもち、運用改善を求めました。その結果、「資格証明書発行世帯に医療が必要となった場合には滞納保険料の納付を条件とせず、短期証を発行す る」という市の答弁を引き出すことができました。
そして、この改善内容については市の担当課から市内の全医療機関宛てに文書で通知することを確認しました。今後も市の対応を注視しながら、制度改善に向けたとりくみを継続して行っていこうと考えています。
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