第12回全日本民医連 共同組織活動交流集会in近畿 最多381演題 もちより討論
全日本民医連共同組織活動交流集会から、全体会(九月七日)のリレートークと、分科会(八日)を紹介します。分科会は七テーマで過去最多三八一演題と特別分科会などが行われました。
リレートーク
共同組織の過去・現在・未来
無差別・平等の医療と福祉をめざす民医連にとって、共同組織はなくてはな らない存在です。民医連綱領にも共同組織と共に運動してきた歴史と、これからも「力をあわせて活動」することを明記。失敗も含めて過去の教訓に学び、次の 運動の力にしています。共同組織の過去、現在、未来をテーマに、山梨、大阪、北海道、沖縄、石川がリレートークしました。
「負(倒産)の遺産を未来へつなぐ」
長田正弘さん(山梨健康友の会事務局長)
一九八三年、山梨勤労者医療協会は二三〇億円の負債を抱え倒産、民医連の歴史で最初のそして最悪の倒産です。原因は幹部が独断でボウリング場などの経営 に乗り出し、スキー場やゴルフ場に投資、融資が焦げ付きました。「共立病院をつぶすな」と立ち上がったのが、患者会と互助会(今の健康友の会)です。和議 再建に向け集会を開き、署名を集めて県当局を動かしました。全国の支援を受け職員が奮闘、一九九七年に債務返済を完了し再建を成し遂げました。
最悪の倒産が最良の教訓を残しました。まず、民医連綱領の発展につながりました。新綱領は(1)民主的運営(2)非営利共同(3)事業所の集団所有とと もに、共同組織の重要性を明記しました。もう一つは民医連統一会計基準ができたことです。倒産の教訓を忘れず、力を合わせてがんばりましょう。
「共同組織の視点での60年の振り返り(健康友の会みみはらの30年の歩み)」
江戸道子さん(大阪・健康友の会みみはら副会長)
友の会は今年、設立三〇年です。一九九八年、同仁会の資金繰りがつかなくなり「前倒産」の事態に陥りました。職員、友の会の努力や全国の支援で乗り切っ たのも束の間、二〇〇〇年に耳原総合病院でセラチア菌の院内感染が起き、三人の患者さんが亡くなりました。病院は事態の全容解明に努め、記者会見を開きま した。私たちは病院の姿勢を正しく知らせようと地域回りをしました。
院内感染を機に、法人は毎年、医療・介護安全大会を開き教訓を伝えています。二つの大きな経験から友の会の活動も変化しました。「病院のパートナーとし て独立しよう」と、名称を「耳原友の会」から「健康友の会みみはら」に変更。病院の“お手伝い”から、自分たちが病院をつくるとの意識に変わりました。
「薬局の無料低額診療事業のとりくみ」
上ヶ嶋哲雄さん(北海道・道北勤医協友の会連合会事務局長)
道北勤医協は二〇〇八年に無料低額診療事業を始めました。経済的理由で院外処方の薬代が払えない患者のために、友の会連合会は全国で初めて、〇九年に「たすけあい募金」を開始。これまで二七三八人から約五四〇万円を集め、二七三人に薬代を援助しました。
目的は国の制度の不備を改善させることです。高知市に学び、一三年に旭川市で薬代の公的助成を実現しました。今年九月から隣の東神楽町でも助成が始まり ました。青森市、苫小牧市と広がり、全国で保険薬局での無低診実現に向けた運動が始まっています。募金がなくても患者が安心して受診できるよう、活動を続 けます。
「石川県内の全行政区と生活圏に健康権・生存権を守る共同組織の支部づくりをめざす」
東洋子さん(石川・南加賀健康友の会事務局長)
石川には事業所を中心に七つの友の会と一つの医療生協があり、約五万四〇〇〇の構成員がいます。来年三月を目標に、友の会を解散して医療生協を含めた二 九支部からなる全県的な連合会の結成をめざしています。共同組織の活動を事業所単位から、地域単位に転換するためです。
県内一九市町のうち、一一市町に支部がありません。この一一行政区と、金沢市で空白になっている八つの中学校区に支部をつくる方針です。大改革ですが、 「誰もが安心して住み続けられるまちづくり」を実現するとりくみです。すでに事業所のない地域も含め、さまざまな活動が始まっています。たとえば、NPO 法人「たすけ愛」は六市二町で福祉有償運送、配食、生活支援、入浴・買物無料送迎など一九事業を展開しています。
「新基地建設を許さず、沖縄県知事選勝利を!」
知念毅さん(沖縄医療生協組織部副部長)
一月の名護市長選では、四一県連からのべ八九九人の支援を受け、辺野古新基地を許さない稲嶺進市長の再選を果たすことができました。法人は昨年一〇~一一月の医療生協強化月間で一五地区の懇談会を開催、医師が講師の健康講話が参加者から喜ばれました。
新基地反対の民意が示されたにもsかかわらず、政府は強引に建設をすすめようとしています。一一月の知事選で新基地反対の知事を誕生させ、国民軽視の政 治の流れを変えましょう。皆さん、沖縄でしかできない選挙活動をしてみませんか。全国から過去最大規模の支援をお願いします。
参加者の声
*島智穂子さん(大阪・此花診療所、事務)…参加者の多 さに圧倒されました。前倒産状態から共同組織とともに病院を守るなど、過去があり今があると実感。これを未来につながなければと思います。診療所の地元は 貧困地域。糖尿病の患者さんが治療を中断したなどの事例がたくさんあります。どうしたら安心して住み続けるまちをつくれるのか、改めて共同組織の人たちと 語り合いたい。
*磯崎悦子さん(医療生協さいたま、理事)…宇都宮さんの 講演や各地の報告から、民意を無視する政府に危機感を強めました。だからこそ、歴史に学ぶことが大事だと思います。山梨の倒産の話は初めて聞き驚きまし た。友の会がささえて守った話が印象的。社会・政治が大変な今だからこそ、医療機関と共同組織の共同を地域から起こしていくことが大切です。
*戸﨑光明さん(岐阜健康友の会会長)…岐阜は福井の原発 に近く、福島の原発事故は人ごとではありません。「安心して住み続けられるまちづくり」は単なるスローガンではなく、差し迫った課題といえます。藤末会長 の講演で、民医連の提言に強い確信を持ちました。提言は実践してこそ意味がある。石川に負けないよう、改革をすすめます。
*泉スヤ子さん(鹿児島・奄美医療生協、組合員)…初参加 です。リレートークの発言には、それぞれの地域で活動があると、改めて感動しました。また、皆さんの奮闘を聞いて「私たちもうかうかしていられない」とい う気持ちにもなりました。基調報告で、真っ先に奄美のバス代助成の運動が取り上げられて嬉しかったです。帰ったらこの思いを伝えたい。
*権藤正広さん(広島医療生協、事務)…土砂災害で全国から支援をいただき、感謝します。史上最大規模の集会で、民医連の歴史を学びパワーをもらいました。災害に遭った住民に寄り添い支援していく力に変えたいと思います。
*山下真歩さん(福岡・大手町リハビリテーション病院、事務)…初参加です。宇都宮さんは、難しい憲法を素人にもわかりやすく解説してくれました。安倍政権が狙う憲法改悪の背景が分かり、憲法に詳しくなった気がします。
分科会
特別分科会「震災、原発事故、大規模災害の経験から人間らしいまちづくりを考える」
阪神・淡路大震災から来年一月で二〇年に、東日本大震災からは今年九月で三年半が経ちました。住民本位の復興と原発のない社会をめざし、どこに住んでいて も安心して暮らせるまちづくりに向けて、特別分科会を開きました。
伊東達也さん(原発問題住民運動全国連絡センター筆頭代表委員)、岩田伸彦さん(阪神・淡路大震災救援・復興兵庫県民会議事務局長)、中川慶子さん(NPO法人新エネルギーをすすめる宝塚の会理事長)がシンポジウムを行い、参加者と討論しました。
浜通り医療生協(福島県いわき市)理事長の伊東さんは、原発事故から三年半経つ福島の現状を報告。いまだ避難生活を続ける一二万六〇〇〇人のうち七割が 心身の不調を訴えている、県内で小中学校や高校の廃校が相次いでいる、大熊、双葉両町の避難者の七割が「地元に帰らない」と表明するなど、「深く静かに深 刻な事態が進行している」と告発。緊急の課題として、原発事故を安全に収束すること、家族全員がそろって住める住居の確保をあげました。
岩田さんは阪神・淡路大震災後の一九年を振り返り、“創造的復興”を掲げた行政が、住民無視の空港建設や再開発を強行した結果「被災者の暮らしが置き去 りにされた」と強調。被災者が国などから借りた「災害援護資金」の返済の滞りや、二〇年の返還期限が設定された「借上復興公営住宅」からの被災者“追い出 し”の問題が浮上している、と話しました。
中川さんは行政と市民の協働で再生可能エネルギーによるまちづくりをすすめる宝塚市(兵庫)の活動を報告。二〇一二年に発足した新エネルギーをすすめる 宝塚の会は、市民出資の「宝塚すみれ発電」を運営、二カ所で太陽光発電が稼働しています。六月市議会で「再生可能エネルギーの利用の推進に関する基本条 例」が可決。すみれ発電は市から市民発電所モデル事業に指定され、小学校の屋根に発電所を広げる予定です。
会場から山口、千葉、兵庫、京都、長野、和歌山の共同組織が、脱原発や被災地支援のとりくみを報告。八王子・たま健康友の会(東京)の武藤幸子事務局長 は、「原発ゼロへ八王子の会」の立ち上げや福島訪問を紹介しました。
第1・2分科会(3)「憲法を守り、いかし、平和を守るとりくみ」「いのちを守るとりくみ、自治体への働きかけ」
「憲法・平和」では、九条の会や脱原発などのとりくみに続き、沖縄健康企画の比嘉直人さんが、統一地方選で新基地建設反対派が議席を伸ばしていると報 告、拍手と歓声に包まれました。沖縄県知事選について「絶対に基地を許さない」と決意を語りました。
「いのち」のテーマでは、無料低額診療利用者に薬代を援助する基金と薬局への無低診実現運動(北海道)、孤立死が相次いだ地域での見守り活動(東京)な ど。資格証明書での受診が多発する青森から自治体と懇談した経験も。
兵庫・東神戸医療互助組合北支部の佐藤フミ子さんは、存続が危ぶまれる神戸電鉄粟生線を守る活動を報告。「公共交通機関の存続は、安心して住み続けられ るまちづくりのひとつ。市長選でも争点となり、調査費が予算に計上された」と語り、質問が相次ぎました。
第3分科会(3)「安心して住み続けられるまちづくりのとりくみ」
「憩いの場」づくり(大阪、奈良、京都)をはじめボランティア活動、高齢者や独居の会員宅への訪問活動、食事会の開催などを報告。どれも自信を持った発 表で、「私の地域でも、やってみたい」との感想が相次ぎました。
震災支援バザー、餅つきやお花見など季節の催しを行っている、と報告したのは中野・杉並健康友の会(東京)。発表者の勝又嘉子さんはなんと九三歳。ハキ ハキした口調と堂々とした姿勢で「今後も多面的な活動を広げ続けることを約束します」と決意表明し、会場から拍手が起こりました。
大分健生病院からは通院送迎の報告。一カ月に約四〇〇人が利用しており、「事業としては不採算ですが、通院困難な患者さんから大好評です。外来患者の減 少の歯止めにも」と発表者の佐藤俊明さん。岐阜・みどり病院は友の会と協力した災害時のトリアージ訓練の報告。回を重ねるにつれて自治会から見学に来た り、消防署の指導も得られるようになりました。
第4分科会(3)「地域まるごと健康づくりのとりくみ」
保健学校や講座、介護予防も狙った運動サークル、街頭健康チェックなどの実践一五本を報告。質疑も活発に交わされました。
大腸がん検診で、非組合員も含め町内の九割に声をかけているヘルスコープおおさか緑支部の報告には「検査キット配布のコツは?」との質問が。「町内に検 体を集める“とまり木”のような家を作ること」との答えとともに「要精査とされても怖くて受診しない人がいる」など課題も。
健康増進の活動を自治体の「健康マイレージ」制度も活用しすすめている(福岡)、高齢者の見守りを町会や商店街を巻き込んで展望(東京)など、従来からの活動にも工夫が加わっています。
職員も奮闘。脳血管障害などで言語障害を負った人の集団リハの「会」を友の会で結成、医療保険では制約がある訓練の場を作っている言語聴覚士(奈良) や、医療懇談会を参加型にし教育大の学生たちと協同で子ども向けの「健康かるた」を作っている医師(北海道)が報告しました。
長崎・させぼ健康友の会は、石川の友の会から学んだ居場所づくりに挑戦中。「笑って死ねる病院はまだないが、笑って死ねる地域をめざす」と決意を語りました。