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民医連新聞

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広島土砂災害 そのとき訪問看護STは… 独居や重度の人たちを最優先にすべての患者の安否確認に走る

 八月に広島市で起きた集中豪雨被害。これはどこでも起こりかねない災害です。国土交通省の発表でも、土砂災害の危険があり、対策 が必要な場所が全国で五二万五三〇七カ所にのぼっています。では、災害発生時、在宅患者・利用者の安全をどう守るのか。今回の災害で安否確認や避難生活の 安全確保に動いた訪問看護ステーションもみじ(広島医療生協)で経験を聞きました。(木下直子記者)

災害マニュアル使い

 「もみじ」が訪問していた患者は一〇六人です。自宅ごと土石流に流されて一人が死亡、一四人が被災しましたが、早期にすべての患者の安否や居場所をつかみきり、必要な手だてをとることができました。

*   *

 災害が発生した日の朝、輔平(すけひら)めぐみ所長が職場に駆けつけた時には、すでに先に到着していた職員たちが患者宅に次々と安否確認の電話をかけ始めていました。
 初動で役立ったのは前年作った災害対策マニュアルです。最優先で安否確認が必要な「ひとり暮らし」と「老老世帯」約五〇人をピックアップし、各職員が誰 を担当するかを一覧化。またこの春、情報を更新してありました。これに加え、人工呼吸器や吸引器などを使用中の人を優先してあたった上で、すべての患者に 連絡。連絡がつかなかった約三割の患者宅は訪問することにしました。

線路伝いに泥の中を

 職員は総勢八人ですが、自宅が被災したメンバーもおり、職場にいたのは六人。安全を考えて 単独での行動は避け、二人ずつのチーム二組で出発。道中で困っている人に遭遇した場合を考え、処置キットや血圧計も持ちました。一人は事務所に残り、入っ てくる情報を訪問チームに伝える連絡係になりました。
 被害がひどい地域に近づくと、車ではすすめなくなりました。昔の患者さん宅に車を置かせてもらい、泥の中を線路伝いに歩きました。「泥に閉じ込められて いるかもしれない。安否をつかむのは私たち以外にない。待ってて! という気持ちでした」と輔平さん。真っ先に向かったのは連絡はついたものの避難を渋る 老老世帯。夫は腰椎骨折、妻は片足に壊死がありました。自宅は三〇センチの床上浸水でしたが、助けに来た消防隊を「放っといてくれ」と拒否、看護師たちが 説得にあたりました。しかしいざ避難となると泥で埋まった出入り口が使えず、風呂場の窓から消防隊が救い出しました。
 こうして午後までに二人を残しほぼ全員の安否や居場所を把握。停電で人工呼吸器やエアマットなどの機器が使えなくなった患者は病院や施設へ。午後から通常の訪問看護に戻ることもできました。
 最後の一人は、夕方のテレビニュースで見つけました。「避難所の映像に映っていたのでは」と気づいた職員がおり、避難所に急行。夜七時に安否確認を終えました。

法人は情報整理を担う

 広島医療生協全体では、ケアマネジャーが担当する約三七〇人のうち三十数人が被災し、三人 が亡くなりました。法人福祉部では、ケアマネ向けの情報を随時発信しながら、被災した利用者のリストを一括して作り、事業所から集まる情報を埋めていきま した。情報の整理やコーディネートなどの役割を法人が担う形です。福祉部の本浦孝典部長は「災害地域は限定されていますから、事業所では被災した利用者の 対応と並行して、通常の訪問活動も行わねばなりません。そこを手助けする必要がありました」。
 介護度が重く、避難所生活が難しい利用者は、地域の多くの事業所がショートステイなどの形で受け入れてくれました。「水が出ずに困っている」など、利用 者家族に支援が必要な場合は、法人の組織部に情報を伝え、対応しました。
 「あらためて、災害時の事業所の役割を実感しています。行政が自宅や避難所にもいない利用者の情報を問い合わせてきたのは、発災から一週間経ってからで した」と本浦さん。「現場の職員たちの動きは素晴らしかったと思います」。