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民医連新聞

民医連新聞

学ぼう!総会方針 (9)共同組織 地域の課題を住民目線でまちづくりの頼れる存在

 総会方針を学ぶシリーズ、最終回のテーマは共同組織。総会方針は「地域再生、健康権・生存権実現、地域でのヘルスプロモーション 活動の中心的担い手」と位置付けました。地域の課題を住民目線で捉え、動く共同組織は「安心して住み続けられるまちづくり」の頼れる存在です。孤立を防ぐ “たまり場”づくりや、独居高齢者の見守り、配食サービス、送迎ボランティアに積極的にとりくんでいます。他団体とともに路上生活者支援や「なんでも相談 会」を開く組織も。最近は子どもの貧困に対して無料塾などの学習支援が広がっています。まちづくりの一環として、ローカル線存続、コミュニティーバス実現 など、“交通難民”を解決する運動も。もちろん、がん検診の呼びかけや健康づくりは盛んで、平和を守る運動も各地にあります。百聞は一見にしかず。活動の 一端を紹介します。(新井健治記者)

交通対策
バス代助成制度を実現
鹿児島・奄美医療生協

 バスを利用する組合員さんから、「バス代が高い」という声をよく聞きました。奄美群島には 電車がなく、公共交通機関はバスだけです。法人まちづくり委員会は昨年八月、各自治体のバス代助成制度を調査。奄美群島一二市町村のうち、奄美市と伊仙町 以外は高齢者対象の助成制度(七〇歳以上は無料など)があると分かりました。
 法人と奄美市内の民主団体で「バス料金助成制度を求める会」を結成、三月から班会や街角健康チェック、商店街で署名を呼びかけ、三カ月で五〇九七筆が集 まりました。奄美市六月議会に高齢者のバス代助成制度と低床バスの導入促進を要望する請願を提出、全会一致で採択されました。今後、助成内容について市当 局との懇談等を持ちながら検討、より良い制度となるよう引き続き求めていく予定です。
 署名活動では、市の老人クラブが一九一九筆も届けてくれました。中でも笠利地区の老人クラブが奮闘。奄美市の飛び地に当たる同地区は交通の便が悪く、切実な要求だったと思われます。
 署名に当たり市の高齢者の生活実態も調査しました。六五歳以上の高齢者の九割が国民年金受給者で、一カ月の受給額は平均約四万七〇〇〇円と厳しさを実 感。まちづくりをすすめるうえで、高齢者の生活を守る活動にとりくむこと、行政や老人クラブなどとの連携が大切と分かりました。(法人まちづくり委員会)

健康づくり
“原点”に帰り組織に活気
栃木保健医療生協

 二〇一二年に健康づくり委員会が発足、ウオーキング、ヘルスチャレンジ、笑いヨガを開催。 レインボー健康体操、男性の料理、宇都宮市の散策、卓球など健康づくり班会が続々誕生しています。〇九年と一三年を比較すると、班会開催数は一四九回から 四五二回へ、参加者数は九六五人から三六三二人へ、三倍以上に増えています。
 〇九年ごろまでは「強くて大きな医療生協を」といったスローガン的な訴えで、組合員を増やそうとしていました。組合員から「対象者がいない」「活動が楽 しくない」との声が挙がりました。そこで健康づくりに力を入れ、「医療生協の原点に帰ろう」と、楽しくてためになる活動にとりくんできました。
 中心はレインボー健康体操班会です。筋刺激と脳刺激を組み合わせた高齢者向けの体操で、群馬中央医療生協に学び、今では一〇班二〇〇人が参加していま す。班会に参加する組合員が気軽に友人を誘えるようになり、事業所がない地域でも仲間が増えています。
 また、原発事故で福島から移住した住民のサロン(下野市)に、体操のインストラクターとして参加したり、ヘルスチャレンジでは宇都宮市の後援を得るなど、地域や他団体との連携がすすんでいます。(宮本進、事務)

孤立を防ぐ
民生委員全戸訪問を開始
北海道・十勝勤医協友の会連絡協議会

 連絡会は四月から、十勝勤医協職員とともに帯広市内の民生委員宅の全戸訪問を始めました。これまで三〇一人のうち一五三人と対話できました(九月一日現在)。
 十勝勤医協は二〇一一年から帯広病院、白樺医院、老健白樺で無料低額診療事業を始め、昨年は一二二人が利用しました。連絡会では一二年から、七五歳以上 の独居高齢者(四三一人)と夫婦世帯(五七〇人)の会員に「ひと声かけ・見守り活動」をしています。全戸訪問は民生委員に無低診を紹介して利用を広げると ともに、見守りの情報を共有するのが目的です。
 訪問先では「低年金のため働く高齢者が多く、病気になったら心配。無低診は本当に助かる」「無低診を掲載した友の会ニュースを保存している」「中学校の PTA役員です。就学援助利用者は無低診を利用できることを知らせたい」と無低診に積極的に協力してもらえそうです。また、「様子がおかしいと思い、訪問 したら脳出血で倒れていた。男性の一人暮らしは大変なのに、『自分は大丈夫』と言う人が多い」と経験を話す民生委員もいました。
 連絡会は今年一月、「帯広市きづきネットワーク」に加盟しました。同ネットには行政と町内会、民生委員や児童委員、老人クラブ、企業など各種団体が加 盟、見守りを通して孤独死、虐待などから市民を守る活動を行っています。
 「健康で安心して暮らせるまちづくり」をめざし、さまざまな団体と手を携えて活動することが大切です。帯広市だけでなく幕別町でも民生委員訪問を始めま した。全町村でのとりくみをめざします。(山本鉄雄事務局長)

いのち守る
有志で路上生活者を支援
群馬・はるな生協

 職員と組合員有志で「反貧困実行委員会」を立ち上げ、毎月第一、三土曜日に高崎市の公園で路上生活者対象の炊き出し、第四火曜日にはハローワーク高崎近くの労使会館でなんでも相談会を開いています。参加者は毎回二〇~三〇人です。
 きっかけは二〇〇八年に東京で行われた年越し派遣村です。「地元の高崎市でも、できることはないか」と上伊那医療生協(長野)のSOSネットワークやカトリック高崎教会の支援を見学、〇九年から始めました。
 炊き出しはおにぎりと味噌汁が中心で、衣類や石鹸、歯ブラシ、タオルなど生活必需品も配っています。なんでも相談会は自由法曹団、地区労と協力し、健 康、法律、労働、生活など各分野にわたります。相談会にはこれまで二一〇〇人が参加、うち九〇人が生活保護を申請しました。
 最近は介護に関わる相談が増えています。なかでも、親の年金を頼りに仕事を辞めて介護をし、親が亡くなったとたんに年金も途絶えて生活苦に陥るという人 が目立ちます。五年間続けてきて感じるのは、誰もが貧困に陥る危険性があること、自分からSOSを発しないと誰も助けてはくれないということです。(野口 祐美、事務)

学習支援
初の夏休み宿題お助け塾
福岡・ありあけ健康友の会

 班会で「塾に行きたくても通えない子がいる」「食事はスナック菓子という子も」と話題になりました。アンテナを広げると、米の山病院のある大牟田市三池・高取地区でも、子どもの貧困が問題になっていることが分かりました。
 そこで友の会と「地域サポートネットたかとり」が合同で初めて無料塾を企画、米の山病院と高取保育園の協力で七、八月に一回ずつ開き、小学一年生から中 学二年生まで計三一人が参加しました。スタッフは四〇人で、元教師の友の会会員や職員、佐賀大学と九州大学の医学生、米の山病院の研修医が勉強を教えまし た。
 「分かんないからとばす」と言う小学三年生に、「今日は割り算を覚えて帰ろうか」と絵を描いて教える研修医。すぐに飽きて「遊んでー」と言う男の子には、おんぶや肩車をしてあげる医学生も。
 「子どもの貧困は食の貧困でもある」との問題意識から、米の山病院栄養科に夏野菜カレーの昼食を作ってもらいました。「みんなで食べるとおいしい」とお かわりをする子どもたち。午後は竹で箸とコップを作り、流しそうめんを体験しました。子どもたちから「割り算が少し分かった気がする」「家で勉強を聞いて も教えてもらえない。来てよかった」「流しそうめんは初めて」「この夏、最高の思い出」などの感想が。
 いつまで経っても宿題を始めない中学二年の男子生徒がいました。困ったスタッフが「勉強したいと思ってきたんじゃないの? 帰る」と問いかけると「家に 帰ってもクーラーないやん」と、スマホを出してゲームを始める始末。
 スタッフの医学生が「すぐにキレる子や、集中力の無い子が多かった」と話したように、家庭環境など子どもがさまざまな困難を抱えていることも分かりまし た。子どものたまり場が必要なこと、子どもたちの親への支援も必要と感じました。(米村理恵、米の山病院・事務)


 子どもの貧困は、最近注目される課題です。“貧困の連鎖”を断つために、学習支援が広がっ ています。地域の反貧困ネットワークと共催(長野医療生協、長野・中信勤医協)、「宿題いっしょにやろう会」(滋賀・しが健康友の会)、「子ども応援ひろ ば」(和歌山中央医療生協、兵庫・尼崎医療生協)のほか、潮江診療所(高知)、淀川勤労者厚生協会(大阪)、平和会(奈良)、岐阜健康友の会などがとりく んでいます。北医療生協(愛知)は名古屋市の生活保護世帯支援事業を受託、「寺子屋学習塾」を七月から始めました。