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民医連新聞

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相談室日誌 連載377 「無縁社会」がすすむ東京で考えること 松本裕子(東京)

 各地から人が集まる東京の現場には、無縁社会を想起する事例が多くあります。「親族がいない」「知人が窓口」「入院中に家がなくなる」などの共通項があります。
 私が担当する回復期リハビリテーション病棟の患者さんのうち、脳卒中の方が八割で、入院時に患者が自らの生活歴を話せる状態でないことも少なくありませ ん。また、紹介元の病院が患者さんのキーパーソンとして知人を申し送ってくる場合、ご本人の生活歴を語れるほど親しい人は少なく、患者さんを守ることを第 一に考える時、どこまで頼っていいか迷う日々です。
 七〇代のAさんはくも膜下出血のリハビリで入院した元自営業者です。ADLは全介助、複雑な内容の会話をすることは困難で、正確な情報を本人から得られ なくなりました。親族はおらず、知人がキーパーソンとして紹介されました。その知人からAさんには年金や預金がない上に、自宅を引き払わなければならない 状況にあると知らされ、入院中に生活保護を申請しました。Aさんの後遺症は重度で、常に介護がなければ生活できないため、当院での入院期限が来ないうち に、次の生活拠点を考え、退院支援する必要がありました。
 知人から聞いたAさんの生活歴は断片的なものでしたが、それを元に退院先を検討。Aさんの退院先は郊外の介護施設になりました。しかし果たして生活の質 の点でAさんの権利を守ることができたのか、未だに自分でも答えが出ていません。
 本来なら福祉事務所がAさんに関する情報を職権で収集することも可能だったと思うのです。しかし、入院期限が迫る中、福祉事務所ケースワーカーの現場業 務にも限界があり、細やかな支援ができたとは思えません。施設入所するだけで良いなら、受け入れ先を見つけて解決です。しかし本当にそれだけで良いのか、 ジレンマを感じました。
 「キーパーソンは知人」という患者さんは今後さらに増加していくでしょう。SWとしてだけでなく、一個人としても、どのように権利を守っていくのか、考えさせられています。

(民医連新聞 第1579号 2014年9月1日)